最後にクイズです。

 ほとんどの人間は大好きなのにネコはめったに食べないものはなんでしょうか?

 答えは、オレンジやリンゴなどの果物です。果物にはビタミンCが豊富に含まれており、人間はビタミンCを主に果物から取り入れています。これは、身体を維持するのに必要なビタミンCを体内で合成する仕組みが退化したための対処です。一方のネコは、その体内合成の仕組みを維持していますので、果物を食べる必要がなく、めったに食べないのです。

 人間の祖先は、果物が豊富なジャングルに長らく生活していたので、ビタミンCを体内で合成する仕組みが必要なく、退化させてしまったようです。そのため、ジャングルに生活しなくなった文明社会でも、果物などのビタミンCが豊富な食べものを食べ続ける必要が生じているのです。果物嫌いなどと言っていると、ビタミンCが欠乏して壊血病(ビタミンCの継続的な欠乏によって発症する出血性の障害)になる恐れがあります。果物嫌いは生死にかかわるので、果物嫌いはめったにいないのです。

【今回の結論】多様な毒に対応するため、人類には生まれながらに多様な好き嫌いがある。しかし現代では毒を極限まで減らす努力がされているので、好き嫌いを克服するほうが健康によい

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石川幹人

石川幹人

石川幹人(いしかわ・まさと)/明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。東京工業大学理学部応用物理学科卒。パナソニックで映像情報システムの設計開発を手掛け、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事。専門は認知情報論及び科学基礎論。2013年に国際生命情報科学会賞、15年に科学技術社会論学会実践賞などを受賞。「嵐のワクワク学校」などのイベント講師、『サイエンスZERO』(NHK)、『たけしのTVタックル』(テレビ朝日)ほか数多くのテレビやラジオ番組に出演。著書多数

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