これが「嫌いな食べもの」の生物学的な始まりです。「嫌い」の要因は、においや味や食感など多種あるので、人によって、それぞれの要因を「嫌い」と感じる度合いが違うのです。セロリが嫌いな人は、セロリが持つ何らかの要因が苦手なのです。そしてこのセロリ好きかどうかが、セロリの持つ栄養を重視するか、毒を警戒するかの選択になっているのです。

 つまり、周囲に食べるものがセロリしかなかったら、まずセロリ好きがそれを食べ、餓死をまぬがれるということです。逆に、もしセロリに毒が入っていたら、セロリ好きが先に死に、セロリ嫌いが生き残ります。でも生き残っても、どこか別の土地に食べものを探しに放浪しないといけませんね。私は、そうやって放浪した祖先の生き残りなのかもしれません。

 物騒な話になりましたが、ご安心ください。現在の野菜は、毒が非常に少なくなるように品種改良されているので、売られている「よく知られた食べもの」は、毒よりも栄養が豊富なので、どれも食べたほうがよいのです。だから、「好き嫌いせずに何でも食べなさい」と大人は子どもに言うのです。今では、いろいろな食べものを食べたほうが、栄養が偏らずに長生きできることが知られています。嫌いな食べものでも、少しずつ口にして慣れれば、食べられるようになります。同じにおいをかぎ続けているとわからなくなるのと同様の現象です。

 さて、食べものの好き嫌いがあるのは人間だけでしょうか。私のうちではネコを飼っていて、マリリンと言いますが、すごく好き嫌いが激しいです。CMで「ネコまっしぐら」とされる餌を買い与えても見向きもしません。特定の餌しか食べないのです。マリリンが食べない餌を隣のネコにあげると、こちらはよく食べるのです。最近マリリンは、腎臓を悪くして獣医師さんから腎臓によい餌を勧められたのですが、これもあまり好きではないようで困っています。このように、多くの動物にも食べものの好き嫌いがあります。

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