そもそも、民間試験を各大学がどう活用するかが決まっていない点も、高校現場の混乱を招いている。文科省の8月時点での調査によると、4年制大学の約3割が利用法を明らかにしていない。文科省大学入試室の担当者は「他大学の動きを見ているか、各試験の情報が出そろわないので決めかねているのでは」とみる。
たとえば東京大学は一定のレベルを出願要件としているが、その証明は民間試験の成績だけでなく、高校による証明書でも認めるとし、事実上、民間試験を受けなくても受験できる。北海道大学や東北大学は少なくとも20年度は「利用しない」方針だ。
利用する大学でも、「出願資格」とするか「加点」とするかなどで対応が分かれる。大学はそれぞれの入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)に応じた使い方をしているのだ。
こうした状況に、現場の英語教員からも悲鳴が上がる。千葉県立成田国際高等学校で英語を教える下村明教諭は、こう話す。
「とりあえず全員に共通ID(個人の成績情報を一元管理するため大学入試センターが発行するID)を取るように指示しています。全国の高校ではいま、英語教員に生徒や保護者から質問が集まっていることと思いますが、答えることが難しいのが現状です」
(文/稲田砂知子)