■「大学入試英語成績提供システム」の年間スケジュール。受験期間がABC の三つに分けられているのは、総合型選抜(旧 AO 入試)、学校推薦型選抜(旧推薦入試)、一般選抜(旧一般入試)のそれぞれの願書締め切りに合わせるため。※文科省発表の資料をもとに作成
■「大学入試英語成績提供システム」の年間スケジュール。受験期間がABC の三つに分けられているのは、総合型選抜(旧 AO 入試)、学校推薦型選抜(旧推薦入試)、一般選抜(旧一般入試)のそれぞれの願書締め切りに合わせるため。※文科省発表の資料をもとに作成
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 2020年度から、大学入試センター試験に代わり「大学入学共通テスト」が始まる。英語では共通テストに加えて、民間団体が実施する検定試験が活用されることが決まっているが、この運用をめぐって、高校の教育現場などから不安の声が続々と上がっている。なぜ、このような事態になっているのか。民間試験導入の是非とは──。発売中の英語学習誌「AERA English2019 Autumn & Winter」(朝日新聞出版)から抜粋して紹介する。

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 全国の国公立・私立高校の校長からなる全国高等学校長協会(全高長)は9月10日、文部科学大臣宛ての要望書を提出した。「受験開始が迫っているにもかかわらず、民間検定試験(以下、民間試験)の導入は全く先が見えない状況。延期もしくは制度の見直しを求める」という内容。全高長が文科省に"直訴"するのは、7月に続き、2度目だ。

 会長を務める東京都立西高等学校の萩原聡校長は、こう説明する。

「7月に各都道府県の校長にアンケートを取ったところ、全てのグループから、民間試験による英語入試を見送るべきという意見が出されました。課題を解決しないまま、民間試験の活用を開始することは極めて重大な問題だと考えています」

 要望書を受け取った文科省の担当者は、「予定通り進めたい。そのため不安を早く払拭できるよう取り組んでいきたい」と答えたという。

「今後も国立大学協会や民間試験実施団体と話し合いを続けていきます。文科省が強行するとさらなる大きな混乱が予想されます」(萩原校長)

 高校現場が危惧しているのはおもに、(1)各試験の実施日程や場所など詳細が明らかになっていないこと、(2)活用方法を明らかにしていない大学が多数あること、(3)試験の公平性、公正性に対する不信が払拭されていないことだ。

 いまの高校2年生が受験するタイミングで、大学入試は大きく変わる。2021年1月から導入される大学入学共通テスト(以下、共通テスト)では、国語や数学で記述式問題が導入され、英語はリスニングの配点が大きくなる。英語ではこの共通テストに加え、民間で実施されている検定試験が入試に組み込まれ、4技能(聞く、読む、話す、書く)を評価することになった。23年度までは共通テストと民間試験が併用されるが、それ以降は共通テストを実施せず、民間試験のみとなる予定だ。

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7月、TOEICが参加を取り下げる