阪神の矢野燿大監督 (c)朝日新聞社
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 セ・リーグのクライマックスシリーズファーストステージはレギュラーシーズン3位の阪神が2位のDeNAを2勝1敗で下してファイナルステージ進出を決めた。ペナントレース終盤では一つも負けられない状況から6連勝して滑り込みで3位に入り、ファーストステージも勝ち抜くことができた要因はどこにあるのか、探ってみたいと思う。

 まず阪神の最大の強みは安定したリリーフ陣にある。救援防御率2.70は12球団でもダントツのトップ。2位の楽天が3.07、3位のソフトバンクが3.24、セ・リーグで2位の中日が3.32という数字を見てもいかに阪神のリリーフ陣が安定していたかがよく分かるだろう。勝ちパターンであるドリス、ジョンソン、藤川球児に加えて大きいのが岩崎優、島本浩也の両サウスポーの成長である。防御率はともに1点台、奪三振率は9点台(1イニングで1以上)をマークしており、制球力が高くて三振が奪える投手の指標で3.5を超えると優秀と言われるK/BBでも岩崎は3.41、島本は4.29と高い数値をマークしている。

 一方、先発投手陣は規定投球回数を超えたのが西勇輝と青柳晃洋の二人だけであり、決して万全と言える状態ではなかった。そこで負けられない戦いが続いた終盤、阪神は思い切ってリリーフで勝負する戦い方に大きくシフトしたのだ。まず先発要員だったガルシアがリリーフに転向。最後の6連勝のうち3試合でそのガルシアがリリーフとして勝ち投手になっている。9月21日の広島戦は西が8回を投げ切ったが、それ以外の5試合は全て先発が5回までにマウンドを降り、リリーフ陣を早めにつぎ込んで守り切ったのだ。

 長いシーズンでは当然このような起用はできないが、限られた数試合であれば有効である。1994年の「10.8決戦」では巨人が槙原寛己、斎藤雅樹、桑田真澄の先発三本柱による継投で中日を下して優勝を決めたという例を覚えている野球ファンは多いだろう。阪神は先発陣ではなく、強力なリリーフ陣でそれに近いことをやってのけたとも言えるだろう。

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長所を生かした矢野采配