B&Bで天下を獲った島田洋七(撮影/中西正男) (c)朝日新聞社
B&Bで天下を獲った島田洋七(撮影/中西正男) (c)朝日新聞社

 少し前まで、連日報道されていた吉本興業の“闇営業”問題。テレビや紙面などでこの話題を聞く機会はめっきり減ったが、実は、この件に関して今も多くの芸人から相談を受けている人物がいる。それが島田洋七だ。

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 漫才コンビ「B&B」として天下を取り、私小説「佐賀のがばいばあちゃん」が大ヒット。多い時には年間300本以上の講演を行うなど多忙な日々を送るが、この2カ月ほどで数十件の相談が洋七のところにきたという。

「オレは吉本を出たり入ったり、何回かやってるからね。なかなかそんなヤツおらんから、中も外も知ってる人間として、いろいろな芸人から連絡が来てる。これはホラちゃうよ(笑)。ホンマの話。ま、それだけ、みんな悩んで、いろいろ考えてるんやなと改めて思いますわ」

 吉本所属と離脱を経験し、現在はオスカープロモーションにマネジメントを依頼しつつ、個人的に講演活動なども行う状態。洋七にしかない視点を求め、後輩芸人たちが意見を求めにくるという構図だが、実際、今回の騒動をどう見てきたのか。9月7日、大阪での講演前に楽屋を訪ねた。

「辞め方が難しいこと。今回の騒動の根底にあることやと思う。そして、芸人の世界に入りやすくなったこと。その大きなのは学校(NSC)やろうね。最初に言うとくけど、学校があるのはいいことなんよ。昔みたいに、師匠について芸人を目指す形やったら、結局は師匠の芸の模倣やから新しいものは生まれにくい。例えば、ゆりやん(レトリィバァ)とか、あんな子は師弟のシステムでは生まれんよ(笑)。(ビート)たけしも『こういうのが出てきたら、オレら負けだぞ』と言ってたもんな」

 誰かのコピーではない斬新な商品が生まれる。多くの可能性ある若者を集められる。養成所システムの良いところを理解しつつも、そこから生まれる問題点も指摘する。

「学校ということは、簡単には入れるのよ。弟子入りほどハードルが高くないし。ただ、ほとんどの人間が売れない。ほぼ全員と言ってもいい。でも、今は芸人全体の需要も増えているから、何かしらの形でテレビには出たりする。顔が誰かに似ているとか、突拍子もないことをやるとか、そういう形で。ということは、それだけ『行けるかも…』という期待を持つ人間も増えるということ。でもね、それだけでは売れんよ。基本はしゃべりの力やから。簡単に入れて、チャンスが狙えそうな空気もある。だから、辞めない。でも、暮らしていくほど仕事はない。そら、ああいう闇営業というか、チョクに行く流れが生まれるよ」

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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