その一方で、「3月・6月」の採用日程では、海外に長期留学した学生などはタイミングが合わなくなることが多い。海外の外国人学生を採用しようとしても、やはり時間軸が変わってくる。既存の新卒一括採用という国内ルールに固執していては、世界と戦っていくことはできないのである。

「ただ、一括採用も合理的で効率的なのです。これを一気になくしてしまうと混乱を招き、採用生産性も悪化します。政府も今すぐに変えることは、企業にも学生にも不安を与えると認識して維持するとしているのです。一括採用を根本から変えるためには、日本型の雇用慣行そのものを変えないとうまく回りません」(増本さん)

 現行の「3月・6月」になった理由も、学習機会をなるべく担保して学生の能力を高めるためだ。このように、雇用慣行と新卒採用、大学教育がリンクしているため、簡単には変わりそうもない印象を受けてしまう。

「20年に大学に入学した人が4年生になる23年春の採用形態がどうなるかは、私も予想がつきません。ソニーのようにAI(人工知能)が専門なら新卒でも年収730万円を出すという人材が、Society 5・0時代の企業を牽引していくことは確かです。もちろんスキルベースのマッチングが必要ですが、これがジョブ型採用の典型になっていくでしょう。あらかじめ用意されたポストに関するスキルが問われるので、新卒や中途採用という区別がないのも特徴。だからこそ一般的な新卒に比べて職務レベルが高く、給与が高いということになるわけです」(増本さん)

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社会に出てからも学び続けられる力が必要