

感染症は微生物が起こす病気である。そして、ワインや日本酒などのアルコールは、微生物が発酵によって作り出す飲み物である。両者の共通項は、とても多いのだ。
感染症を専門とする医師であり、健康に関するプロであると同時に、日本ソムリエ協会認定のシニア・ワイン・エキスパートでもある岩田健太郎先生が「ワインと健康の関係」について解説したこの連載が本になりました!『ワインは毒か、薬か。』(朝日新聞出版)カバーは『もやしもん』で大人気の漫画家、石川雅之先生の書き下ろしで、4Pの漫画も収録しています。
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「要素還元主義」であれば「砂糖がよくない」→「砂糖が入っていればすべて悪」という結論になるのだが、飲食物と健康の関係はもっと複雑にできている。例えば、果物だ。
果物のほとんどには糖分が入っている。果糖(フルクトース)は果物に入っているから「果」糖なのだ。ブドウ糖(グルコース)はブドウから取られたからブドウ糖だ。ブドウ糖を精製すると砂糖になるのだ。
現在、われわれが取っている砂糖は、サトウキビかテンサイから得られたものだ。砂糖入り飲料は健康によくないのであれば、糖分たっぷりの果物は当然体に悪いだろうと予想される。これが演繹法の導く結論だ。
しかし、事実はそうではない。中国で行われた大規模な研究によると、果物の摂取で血圧が下がり、血糖が下がり(!)、そして心臓血管系の病気による死亡率が下がったのだ(Du H et al. New England Journal of Medicine. 2016 7;374(14):1332–43)。
直感的には糖分の多い果物を食べると血糖値は上がるような気がするが、真逆なのだ。果物は糖分の固まりではない。そこにはアミノ酸が入っており、たくさんの複雑な有機物質が入っており、線維が入っている。そのような複雑な物質は「砂糖そのもの」ではないのだ。たとえ果糖やブドウ糖が入っていても、全体としては人の健康にプラスに作用するのだ。