「昨年の交流戦で汎用テーマの選手がスタメンに4人いたことがありました。同じ応援歌が続くとお客さんも飽きてしまうんじゃないかと思うし、これはなんとかしないといけないなと。でも曲を作っている時間もないし悩みましたが…最終的には『退団してもう使わなくなっていた選手の曲』を、今の選手の名前にそれぞれ入れ替えて対応しました。一般のお客さんの中には、応援を楽しみにしてくれている方も多いので、やっぱりそこは他球団を見ていても気になりますね」(倉橋さん)
全国星覇会では、シーズン前に必ず応援歌についての会議を開く。既存の選手の中で応援歌の無い選手やドラフト、トレード、FAなどで新しく入ってきた選手の中で、「どの選手に応援歌が必要か」を話し合い、歌詞を決めていく。増えるのが2、3曲であっても、長い時では会議は5時間ほどにものぼる。会議でも決まらなかった場合は、その後メールなどで連絡を取り合い、応援歌を完成させていく。
応援団は完全なボランティアだ。もちろん、球団からは手当てなどはない。メンバーは、仕事もあるし、学校もあるし、家庭だってある。なぜ、ここまでできるのか。
「チームが好きだから。それだけです。メンバーも皆そうだと思います。普通の応援では満足できないから、それ以上のことをやっているだけ。応援がなかったら何しよう?って思っちゃいます(笑)もう生きがいですね。イベントとかで選手も『みなさんの応援が力になります』って言ってくれる。社交辞令かもしれないけど、それを信じて僕らは応援しています。これからも応援し続けていきたいですね」(倉橋さん)
中日の与田監督は、今回のサウスポー問題について、「『お前』という歌詞を『選手名』にしてほしいだけ」「自粛してほしいなんて言っていない」と語っている。プロ野球OBや評論家からも、さまざまな意見が出てはいるが、現時点でも「自粛」が続いているようだ。今後、応援歌はどうなってしまうのか。チームへの愛から生まれた応援歌には、なにも罪はない。(文/AERA dot.編集部・岡本直也)