うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格。ベストセラー『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』の著者・杉山奈津子さんが、今や5歳児母。日々子育てに奮闘する中で見えてきた“なっちゃん流教育論”をお届けします。
この連載が本になりました。タイトルは『東大ママのラク&サボでも「できる子」になる育児法』です。杉山さん自身が心理カウンセラーとして学んできた学術的根拠も交えつつ語る「私の育児論」を、ぜひご覧ください。
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以前のコラムで、子どもに言うことを聞かせるために、「悪いことをすると地獄にいく」という絵本をみせる、という話をしました。うそをつくと、閻魔(えんま)様が舌をひっぱってぬいてしまう、と怖がらせて、言うことをきかせるというものです。
■「納得」ではなく「圧力」でやめる子どもたち
しかし、この作戦は、適切な年齢になったら中止してください(子どもが地獄というものを真剣に信じる年齢までしか意味がないものですが)。実は、圧力や脅しによる「してはいけない」という制限は非常に一時的にしか効果がないとわかっています。
脅かして「うそをつかない」ようにさせても、子どもは自分の中で「よくないことだ」と納得しているわけではなく、「罰を受けるから」という圧力のせいでやめているわけです。では、その圧力から解放されたとき、どんな行動をとるでしょうか。
アメリカの人類学者・社会心理学者であるジョナサン・フリードマンが、ある実験をしました。小学4年生の男の子たちを22人ずつ二つのグループに分け、いくつかあるオモチャを見せて、「このロボットだけは非常に値段が高いから遊ばないように」と言ったのです。
一つのグループには、「遊んでいるのを見つけたら怒るからね」という圧力をかけてから、部屋の外で見張りました。もう一つのグループには、「ロボットで遊ぶのはよくないことだよ」とだけ言って、脅すような言い方はしませんでした。
結果として、二つのグループのうち、ロボットで遊んでしまった子は、前者は2人、後者は1人でした。
この結果だけをみれば、「脅すのも諭すのもたいして変わらない」ということになります。しかし、この実験はもっと長期的な視野で行われたものでした。