6週間後、フリードマンがいない状況で、前回と同じオモチャを置き、子どもたちに「好きなオモチャで遊びなさい」と言いました。すると、「ロボットで遊んだら怒る」と圧力をかけられた子どもたちは70%以上がロボットで遊びました。対して、「ロボットで遊ぶことはよくないこと」だと言われた子どもたちの中で、ロボットで遊んだのは30%程度と、大きな差が生まれたのです。

■「納得」すると「いけないこと」だと自分の心に従う

「してはいけない」と圧力をかけられてやらなかった子どもたちは、「怒る人がいなければやっていい」と、一時的に怒られるのを避けただけでした。そして、「よくないこと」とだけ言われた子どもたちは、特にやめなくてはいけないほどの外圧はなかったわけなので、最初に遊ぶ時点で、自分たちの心の中で「このロボットで遊ぶのはいけないことなのだ」と一度納得をしたのです。そして2回目以降も、「これはしてはいけないことだ」と納得した自分の心に従ったわけです。

 加えて、人間は「自分の行動は自分で決めたい」という精神が働きます。人にやれと言われたことをやりたくないと感じ、やってはいけないと言われたことをやりたいと思います。これを「心理的リアクタンス」といいます。

 これらのことから、子どもたちに対して、「やってはいけないこと」「やるべきこと」を教えるときのポイントがわかります。

 もし、勉強や宿題をやらせたいと思っている親が、子どもに対して、「勉強しないとダメになるよ」「やらないと怒るからね!」と言ったところで、単なる脅しになってしまうため、やるのはその場限りの一時的なものです。

 さらにいえば、部屋にいて勉強をやっていないことが親にバレない状態なら、やらないこともありえます。子どもたちが心の中で自発的に「やるべきことだからやる」と思うものでなければ、親の言葉には全く効力がないのです。

 たとえば子どもが学校の試験でいい点数をとりたいと思ったなら、目標の大学に入りたいと思ったなら、自分からずんずんと勉強するでしょう。それは、自分の中で「勉強をしよう」と自発的に思えたからです。そんなときに親が「勉強しなさい」などと言ってしまうと、かえって水を差してやる気を失わせてしまいます。

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