避難者らは、交代で体育館やトイレ、洗面所の掃除をした。ペットの体調管理については、保健所を通じて依頼した獣医師が、月1回程度様子を見に来てくれたという。
倉敷市にも、全国からペット用品やペットフードが寄せられたが、開封済みのペットフードや使用済みのケージは、衛生面を考えて受け入れなかったという。ペットフードやペットシーツ、オムツなどの補充の要望があった際は、市の保健所が対応した。
武さんによると、倉敷市のペット同伴避難所も、大きなトラブルはなかったという。「思った以上にペットが騒がなかったので驚きました。夜の遠吠えもなく、静かでした。基本的に飼い主さんと一緒で安心したのかもしれませんし、ケージに目隠しをして、動物同士でお互いの姿が見えないようにしたのもよかったのかもしれません」
ペット同伴避難所の開設、運営には、どのような課題があるのか。倉敷市も、災害時の避難所では、ペットは基本的に避難者が生活する場所とは別で、屋根のあるところなどで受け入れるとしている。しかし、栗原さんは「現在は室内飼いのペットが多いので、避難生活が長期にわたる場合は、臨機応変に対応する必要があります」と話す。
武さんは言う。「ペットがいる世帯を集められる適地があるのかどうかという場所の問題があります。今回の穂井田小学校は住宅密集地にはなく、社会福祉協議会で炊き出しをしてくれるなど、学校や地域の方々が協力的でした。体育館や公民館、ホールは不特定多数の人が使いますし、その中に動物アレルギーの人がいる可能性もあります。災害はいつ起きるかだけでなく、どこで起きるかまで考えて、備えをしなければなりません」
環境省動物愛護管理室の担当者は「学校の教室を利用して、動物アレルギーの人たちと、ペットを連れた人たちを離して別々のスペースで受け入れるなど、動線が交わらないようにすることは可能です。自治体や避難所となる施設の管理者が備えることも大切ですし、飼い主には、普段からペットと一緒に受け入れてもらえる避難場所などの情報を集めておいてほしい」と話す。
災害時に、大切なペットとどう行動するか、どのようにして飼い主とペットを支援するか。明確な答えはないが、ペットを飼っている人もそうでない人も、自治体なども、それぞれの立場で考え、備えておく必要があるのではないだろうか。(ライター・南文枝)