総社市の避難所開設・運営マニュアルでは、犬や猫などのペットを避難所の室内に入れることは認められていない。そんななか、なぜペット同伴避難所の開設に踏み切ったのか。
市内の避難所の一つで、当初、1000人規模が避難してきたきびじアリーナ(総社市スポーツセンター)の運営会社であるコナミスポーツが、サブアリーナにブルーシートとスポットクーラーを設置し、ペットとの同伴避難所とした。
しかし、厳しい暑さが続き、スポットクーラーの使用によってブレーカーが落ちてしまう。困り果てた飼い主とペットの状況を知った片岡聡一市長が「ペットは家族。市長室を使用してでもいいから、同伴避難所を設置しろ」と指示。7月10日ごろ、市役所の西庁舎など3カ所にペット同伴避難所が開設され、きびじアリーナなどにいたペット連れの避難者たちに移動してもらった。
こうして始まった同伴避難所の運営を任された白神さんが最初に行ったのは、専門家に入ってもらうことだった。知人の獣医師に声をかけると、すぐに4人が来てペットを診察してくれた。また、別の職員の知人である犬の訓練士が、岡山県井原市からさまざまな大きさのケージを持って駆けつけてくれた。そしてその日の夜、市と獣医師、訓練士らで会議を開き、対応を話し合ったという。
会議では、部屋ごとで人とペットを分けることも提案されたが、最終的に「避難している方々にとって、ペットが心のケアになっている。避難者に対する心のケアを優先しよう」と、飼い主とペットが同じ室内で、一緒に過ごせるように。ただし、ペットはケージに入れてもらうことにした。
それからは、獣医師や訓練士らが、毎日のように避難所を訪れ、避難者にペットの体調・衛生管理などを指導。「ペットの話になると、専門家と私たち職員では、飼い主の皆さんに対する説得力が違いました。最初の段階で専門家と連携できたのは大きかったです」(白神さん)
同伴避難所では衛生対策を徹底し、部屋の出入り口の床などには、消毒用の雑巾を置いた。雑巾は、ボランティアが毎日交換し、掃除をしてくれた。避難者のほとんどが倉敷市真備町の住民だったため、途中からは倉敷市の職員が24時間、交代で運営にかかわったという。