「いじめ」問題は非常に難しいものです。しかし、心理学の研究では、「いじめに関して解決策はなにもない」というわけではないことがわかっています。
いじめをする子どもたちの心理として、まず「グループになると気が大きくなる」ことが挙げられています。この習性を理解したうえで、クラス替えのときに「いじめをしやすいグループを別々のクラスに分ける」という対策をとっている学校もあります。
また、アメリカの研究で、人は公の場で「自分はこういう人間だ」という像を一度でもつくりあげると、それを一貫して保つようになることがわかっています。たとえば、誰かに「私は野菜しか食べない」と言ってしまうと、その後は肉を食べにくくなりますよね。
それと同じ原理で、自分の中に「集団で弱い子をいじめたりしない人間だ」「優しい人間だ」というイメージをもった子は、自然とそうした行動をとりにくくなります。そのために、親は普段から「○○くんはそういうことしないもんね」とラベルをはって、自分をそういう人間だと思わせるよう、誘導できるかと思います。
■親に構ってもらえず、でも「評価されたい」という思い
しかし、こうした公共の場で悪事やイタズラをさせ放題させて放置している親が、果たしてそうした努力をするかは疑問です。心理学者のアドラーは、非行に走る子どもに対して「人は正しいことをしたのに評価されないと、負の注目を集めようとする」と言っています。
つまり、親に構ってもらえず、「注目してもらいたい」という気持ちが、イジメを生み出すことは多々あるのです。
加えて、親がいるのに、悪いことをしても何も言われない場合は、「こういうことをしてもいいんだ」と思ってしまいます。
放任主義と無関心は違います。行動を無理やり制約させると、その子は反発して「そうしたい」と思うことがあります。放任主義とは、「好きなもので遊びなさい」と、子どもの行動を縛らないようにすることです。対して、無関心な親は「勝手に遊びなさい」といって目を離し、子どもが別の子のオモチャをとっても何も言わない親でしょう。
最近ではモンスターペアレントと呼ばれる人たちのせいで、他人の子どもに関わらないようにする人が多くなっています。善意で注意をしていた人たちが、親から文句を言われるなどの被害を受けたくないからとスルーすることが増えてしまえば、さらに子どもが「負の行動でも注目されたい」と思う悪循環ができてしまいます。
子どもの行動に無関心でありながら、子どもへの注意に対してはヒステリックに怒る親の元では、「悪いことをしても最終的に親に守ってもらえる自分」というような、残念な自己イメージしか生まれません。
親は、ちゃんと子どものほうをみて「正しいことをしている場面」を見逃さないようにしましょう。そこをたくさん評価してあげられれば、徐々に子どもの自己イメージも誠実なものとなり、将来的な人間関係もうまく構築されていくのではないでしょうか。
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