そういう人であるだけに「魔性の女」と呼ばれても平気かと思いきや――。前出のインタビューや会見を見る限り、そうではなかったわけだ。そこには、大竹のあと、魔性系女優があまり大成していないことも関係しているだろう。石原真理子に荻野目慶子、高岡早紀、葉月里緒菜(現・葉月里緒奈)などなど。特に最近は、不倫や略奪愛にきびしい目が向けられるから、なおさらである。

 だが、なによりも性格上、そういう見られ方を許せないのかもしれない。会見の最後「結婚の決め手を聞かれたときに言い忘れていたこと」として、彼女はこう言った。

「私は山里さんの仕事に対する姿勢を尊敬しています。私も基本的に怠け者ですが、仕事になると、とことんやってしまう。山里さんをみていると、それが間違っていないんだなって思わせてくれる」

 仕事に対して全力でありたい彼女にとって、ともすれば公私混同というイメージもある「魔性の女」という見られ方は、美学に反するのだろう。山里がそれを否定してくれただけで、涙ぐんでしまうほどつらいことでもあったのだ。

■あみんのヒット曲「待つわ」

 ここで思い出すのが、あみんのヒット曲「待つわ」である。その歌い出しは「かわいいふりしてあの子 わりとやるもんだねと」だった。そして、そう言われ続けることにより「生きるのがつらかった」という心境が語られる。蒼井の気持ちはまさにこういうものだろう。

 さらに、二番には「誰も私の心 見ぬくことはできない」「あなたにだけは わかってほしかった」というフレーズが。どんなイケメンも見抜けなかった蒼井の苦悩を、山里は理解してくれたのではないか。

 ついでにいえば、結婚相手がイケメンだった場合、蒼井が魔性のイメージを払拭するのは難しかっただろう。たとえ、あの会見で山里がしたようなことをしてもらったとしてもだ。それこそ、彼女の元カレと報じられた岡田准一と結婚した宮崎あおいは、同性からの好感度を下げてしまった。イケメンをものにすれば「やるもんだね」と見るのが、世間なのだ。

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