いわば、蒼井は恋愛に関して、どん詰まりの袋小路にいた。それを裏付けるのが昨年12月、ラジオ番組「山里亮太の不毛な議論」で、この結婚のキューピッドでもあるしずちゃんが発した言葉だ。
「優ちゃん、最近はなかなかときめかないというか。『恋愛ができなくて困っている。こじらせている』と言っていて……」
そこに現れたのが、山里だったのである。
ちなみに、今回の結婚は「美女と野獣」になぞらえられたが、そのオリジナルの物語で魔法から解き放たれるのは野獣のほうだ。しかし、このふたりにおいて、呪縛されていたのは蒼井だろう。「魔性の女」と呼ばれる苦悩。山里は世間が注目する会見の場で、そのイメージを否定し、彼女がそう思われたいと願うイメージをアピールしてみせた。
そういう意味では、野獣の立ち位置である山里もじつはオトコマエな王子キャラだったわけだ。そんなうってつけの相手にめぐりあい「魔性の女」コンプレックスから解放された蒼井。というのがこの結婚の本質であり、あの涙の理由なのである。
もっとも、今後、蒼井の異性関係が原因でスピード離婚とでもなれば、彼女はまた「魔性の女」と呼ばれてしまう。あの会見の笑いと涙をむなしくしないためにも、おしどり夫婦でいてほしいものだ。
●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など