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理不尽な存在との付き合い方を描いた『頭に来てもアホとは戦うな!』がシリーズ75万部を突破した。悩める人々を救ってきたこのベストセラーが、知念侑李(Hey! Say! JUMP)主演でドラマ化され、好評放送中だ。
ドラマ化を記念して、原案者の田村耕太郎と、脚本を担当する吹原幸太が、放送に先駆け、各回のエピソードに登場するアホの特徴や、かわし方について議論する。今回は「心配性アホ」について。
■心配はすべきこととすべきでないことがある
吹原:「かもしれない運転」という安全運転方法がありますが、その「かもしれない」にとらわれてしまうと、まったく何もできなくなってしまいます。今回登場するのは、そういうアホです。
田村:閉塞感がそうさせるのか、今の日本には過剰に心配をする人が多いように感じます。
吹原:海外にはあまり心配性の人はいないのでしょうか。
田村:もちろん、ゼロではありませんが、私から見ると「もう少し心配してほしい」と感じる人が多いですね(笑)。
吹原:楽観的すぎるんですね(笑)。
田村:心配性は気遣いが上手の裏返しであって、美点になりうるのですが、それが過ぎると行動に踏み出せなくなってしまいます。私も心配性なのですが、外国人と仕事をするようになって言われたことがあります。「失敗したって世界の終わりじゃないんだから、もっと気楽になりなよ」と。
吹原:なるほど。失敗を、大げさに捉えるなということですね。程度の差ほどあれ、ルーティンから外れたことをするときには、誰もが不安な気持ちがあるはずですからね。
田村:おっしゃるとおりですね。
吹原:自分もどちらかというと心配性なほうです。そんな僕が、劇団を主宰したり、脚本家として独立したりといろいろな行動をしているわけですが、それを実現しているのは心配性でなくなるための努力です。
田村;どのような努力をしていますか。
吹原:まずは、心配する対象を、自分がコントロールできる事柄に限定することです。自分で采配できる内容なら、心配することが準備につながりますから、結果的にプラスになると思うんです。一方で、心配しても意味がないことなら、それは心から取り除きます。
田村:例えば、どんなことがありますか。
吹原:他人の気持ちや行動についての心配です。例えば、「オレのことを嫌っているかも」みたいなことは考えてもしょうがないと思います。つまり、なるべく楽観的であるべきだなと。
田村:楽観的になるために、心がけていることはありますか。
吹原:やっぱり、他人の感情には干渉しないことですね。それで悩むのはムダなことだからです。
■転んでもただでは起きない強さをもとう
吹原:さらに大事にしているのは、「『失敗したらどうしよう』ということは考えずに、失敗しないようにするにはどうするか」、を想定することです。
田村:私の場合は、失敗に対する不安を払拭するために、データに注目しようとしています。例えば、旅先を考えていてテロへの心配がよぎったら、実際に被害にあった方の人数を確認します。そうすると、車や飛行機の事故の方がよっぽど確率が高いことがわかります。
インパクトの強い出来事はショッキングな形で伝わるから、心配につながりやすいのですね。だから、データという客観的な指標を参考にすべきなのです。
吹原:参考になります。
田村:それと同じように、過去の失敗というのは、自分にとってインパクトがあるわけで、思い出すとネガティブな気持ちがわいてきます。しかし、実際にそれで発生した損失というのは数値にすればわずかなことがほとんど。それを確認すると「じつは、たいしたことなかったんだ」と気持ちを切り替えられるはずです。
吹原:田村さんと僕とで共通しているのは、行動することが大事だと考えている点ですね。心配性の人は、心配した上でそれを潰すために努力をするのか準備をして、行動にうつせば失敗の確率を大きく下げられることに気づくべきだと思います。つまり、心配性の人は、いい“スキル”をもっているんです。
田村:同感です。私も心配性なのですが、それがバックアッププランを持つことにつながっています。
吹原:トラブルが発生したら次の手段に移れるように準備をしているんですね。
田村:そうすることで不安を払拭して、前に進むことができるようになるわけです。
吹原:不安の払拭という意味では、自信をもつ努力をすることも大事だと僕は思います。演劇を仕事にすると決心したときも、不安はありましたが「できる」と自分に暗示をかけたものです。今でも、切羽詰まった状態で脚本を書いているときには、パソコンのディスプレイに映った自分に「大丈夫、できるから」と言い聞かせることもあります(笑)。
田村:自分に話しかけるわけですね。
吹原:僕は、「自分と仲良くする」なんて表現しています。そうすることで、不安な自分を説得して自信を持たせ、失敗の可能性を乗り越えられるんですよ。
田村:わかります。私も、今でも強い不安に苛まれることがあります。動きの激しい時代ですから、業界を席巻した人が翌年には消えているなんてことは日常茶飯事です。私も例外ではないと自覚しています。だからこそ、失敗を恐れるだけではいけません。起業家精神といいますか、失敗を糧にできるマインドを持つようにしていますし、私の子どもにもそう教えています。そう考えると、失敗なんてものは存在しないのではないでしょうか。