過度の風俗店通いやアダルトサイトの閲覧から 痴漢や盗撮といった犯罪行為まで、「性依存」のあらわれ方はさまざまである。ただの風俗店好きと何が違うのか、性依存に陥りやすいのはどのような人なのか。数少ない性依存治療の専門家(公認心理師・臨床心理士)である、筑波大学人間系心理学域教授の原田隆之氏に解説してもらった。
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WHO(世界保健機関)による国際疾病分類第11版(ICD-11)に「強迫的性行動症」が新たに追加されました。これは、これまでハイパーセクシャル障害とか「性欲過剰」と呼ばれていた、過度の風俗店通い・マスターベーション・ポルノやアダルトサイトの閲覧、多数の性的パートナーをもつことなどが相当します。
一方、窃触症(痴漢)や窃視症(のぞき、盗撮)、露出症、強制わいせつ、レイプなどの性犯罪は、性嗜好(しこう)障害として従来収載されており、ICD-11で「パラフィリア障害」と名称変更になりました。同障害には、フェティシズム(下着や制服などに執着して繰り返し性的興奮を求めること)や小児性愛なども含まれます。
これらの強迫的性行動症とパラフィリア障害を合わせて、私たちは「性依存」と呼んでいます。性依存はまだ、国際的な概念とはいえませんが、どちらも依存症として適切な治療につなげることが重要です。
パラフィリア障害の多くは犯罪であり、明確な診断基準もあるため、パラフィリア障害であるのかないのかは明らかです。では、単なる風俗店好き、アダルトサイト好きなどと、強迫的性行動症の違いはどこにあるのでしょう。両者を見分けるポイントは、「性的な衝動や行動をコントロールできているか」「本人が著しい苦痛を感じていないか」「本人や周囲の生活に支障が出ていないか」などです。
例えば、風俗店をよく利用する人で、「最近、毎日だから、今日はやめておこうと思っても行ってしまう」「こんなことではだめだ、などの苦痛を感じながらも利用を続けてしまう」「利用料金がかさんで家計を圧迫し、普段から性的なことで頭がいっぱいで仕事がおろそかになっている」などとなると、強迫的性行動症の可能性があります。