■桜庭和志(総合格闘技)

「大晦日といえば紅白」という“日本文化”を「大晦日といえば格闘技」に変えるほど、大きな影響を与えたのが桜庭和志。日本はおろか、世界でも市民権をそこまで得ていなかった総合格闘技をポピュラーなものとした。ある種なんでもありの“喧嘩”のような総合格闘技。その世界で日本人の桜庭が、筋骨隆々の外国人ファイターを巧みな試合展開で圧倒する姿は、実に痛快で一気にファンを増やした。特に当時最強と言われた「グレイシー一族」との激戦は歴史に残る名勝負の連続で、2000年(平成12年)のホイス・グレイシーとの1時間を超える激闘の末の勝利は、格闘技ファンならずとも知っている名場面だ。

 2000年代には、毎年大晦日になると格闘技のイベントが開催され、紅白のライバルになるまでになったもの桜庭の存在を抜きには語れない。野球はアメリカ、サッカーは欧州など、世界の人気スポーツの中心地が日本になることは、決して多くはない。だが、少なくとも桜庭の主戦場だった「PRIDE」が全盛期を迎えたころには、総合格闘技の中心地は確実に日本にあった。試合を盛り上げるための入場パフォーマンスなどにも長けており、それも大きな人気を生んだ理由の一つだった。

■ラグビー日本代表

 令和元年に日本で行われるラグビーのワールドカップ。キャッチコピーは「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」というものだが、2015年(平成27年)に開催された前回イングランド大会での日本代表の“番狂わせ”は、そのキャッチコピーのような、日本スポーツ史上に残る名場面であったのは疑いの余地がない。

 大会前までに、2つの引き分けを挟んでワールドカップ16連敗中だった日本代表は、1次リーグの初戦で過去に2度のワールドカップ制覇を誇る強豪・南アフリカと対戦。世界中はおろか、日本人のラグビーファンでさえも諦めてしまうような、圧倒的な力の差がそこにはあったが、日本代表は予想外の善戦を見せる。試合の最終局面では、同点を狙う戦略も選択肢としてあったが、「同点では歴史は変わらない」とあくまで勝利を目指す道を選択。そしてラストプレーで見事トライを決め世界が驚く大金星を挙げた。試合を中継していた『NHK』で実況を務めた豊原アナウンサーの「いけーっ!いけーっ!」という心からの叫びも、感動をより一層大きなものとした。結果的には予選リーグで3勝したものの予選落ち。しかし、五郎丸歩らスター選手を生み出し、「ラグビー人気」を一気に加速させるきっかけとなった。