医療系、動物看護系専門学校が大学になったケースで、創設者が大学名となったところがあった。
了德寺大(2006年、千葉)は仏教系、地名と間違われることがある。実際、京都市内には真宗大谷派法輪山了徳寺があるが(こちらは「徳」の字)、まったく関係ない。医療関係の仕事に関わってきた了德寺健二氏によってつくられた大学である。了德寺氏は1948年生まれ。2000年に了德寺学園をつくり医療系専門学校を開校している。創設者名が付けられた大学で、唯一、創設者が存命のケースだ。
大阪河崎リハビリテーション大(2006年、大阪)のルーツ校も新しい。1997年設立の河崎医療技術専門学校である。創設者は大阪高等医学専門学校(現・大阪医科大)出身の医師、河崎茂氏だ。
大阪行岡医療大(2012年、大阪)の歴史は、昭和初期につくられた大阪接骨学校から始まる。大阪医科大(現・大阪大医学部)出身の行岡忠雄氏が、1933(昭和8)年に設立した学校だ。その後、日本医学技術学校、行岡リハビリテーション専門学校の開設などを経て、四年制大学を開校した。
亀田医療大(2012年、千葉)のルーツは、江戸時代末期の1830年ごろ、西洋医学を学んだ亀田自證が鴨川で開いた学問所「鉄蕉館」までさかのぼる。その後、1954(昭和29)年、亀田病院附属准看護師学校を開校して今日に至る。
ヤマザキ動物看護大(2010年、東京)の起源は、山崎良壽氏が1967(昭和42)年につくったシブヤ・スクール・オブ・ドッグ・グルーミングである。ヤマザキ動物看護短期大を経て、四年制大学として開学した。
創設者名が付けられたことで、名称変更を余儀なくされた大学もある。1997年、北海道女子大が開学した。ルーツは北海道ドレスメーカー学院である。2000年に北海道浅井学園大に、2005年には浅井学園大に名称変更した。創設者一族の名にちなんだものである。ところが、2006年、浅井幹夫理事長(当時)が背任などの容疑で逮捕されてしまう。まもなく大学経営陣が刷新され、2007年、浅井学園大は北翔大としてスタートすることとなった。「浅井」の名は校名にふさわしくない、ということである。
校名が創設者に関係している大学の歴史を探るとおもしろい。創設者の教育にかける思いが伝わってくる。その結果、これらの大学の出身者が科学技術の進歩、文化芸術の発展などで大きく貢献する。それが名門校の証しとなっていく。
そういえば、アメリカのハーバード大は、清教徒派の牧師ジョン・ハーバードの遺贈によって基礎が築かれた。スタンフォード大は大陸横断鉄道の一つセントラルパシフィック鉄道創立者のリーランド・スタンフォードが若くして亡くなった息子の名を残すために設立されている。
津田梅子、北里柴三郎に続く、お札の肖像画となる大学創設者が将来、現れるだろうか。その大学の社会貢献に関わってくることかもしれない。
<一部、敬称略>
(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫)