2月15日、第4クール2日目。

 宮崎キャンプ、和田は4度目のブルペンに入った。捕手を立たせたままの81球は「やっと、ピッチャーのブルペンらしくなってきていますよね」。6日に28球、10日は43球、12日は60球。階段を一段ずつ上がっていくかのように、強度を高め、球数を増やしてきている。

「ようやく治ったというか、いいところで投げられるようになった。次は捕手を座らせて低めへ、次は変化球、その次にはセットで投げて、それからクイック。順番を追って投げていきます。去年1年、投げていないですからね。少しずつです。一気に、がーんと伸ばしたくないですから」

 今キャンプで、和田は1軍中心のA組には入らず、2軍の若手中心のB組。しかも、その行動は、ほぼ常に1人だ。10代や20代の鍛え盛り、伸び盛りの若手と、復活をかけるベテランでは、体の状態も、トレーニングの目的も強度も違う。ブルペンでのピッチングを終えると、和田はまた、一人でサブグラウンドへ小走りで向かった。

 左手にストップウオッチを持ち、100メートルの快調走を20本。45秒のインターバルも手元で計り、自らスタートを切る。そのスプリントに、リズム感がある。だから、グラウンド脇で和田の姿を見ながら、頭の中で、何となく、数字を数えていた。1、2、3……。和田は必ず、100メートルを「50歩」で刻んでいくのだ。

 ポン、ポン、ポンと、一歩ずつ、躍動感を持って前へ進んでいく。ゴールして、2歩進んで止まるところまで、決められたルーティンかのようだ。

「えっ? 50歩? それ、気づかなかったです。計算、してないんです。そうなんですか? 新たな発見です、それ。じゃ、1歩が2メートルですか? 考えてなかったですけど、へー、そうですか」

 “観察結果”を伝えると、和田が何とも興味深そうにうなずいた。何度も何度も一人で走り続け、走るリズムが自然に、体に刻み込まれてしまったのだろう。それは、順調にトレーニングを積めている証拠でもある。

「去年みたいに、いやな不安はもうないです。去年なら、ここでおかしくなって、グダグダしていましたけど、今、2月中旬ですか? いいキャンプを送れています」

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『復活の日』へ向かって、一歩ずつ、着実に