

日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「手洗い」について森田麻里子医師が「医見」します。
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風邪やインフルエンザは、手を介した接触感染で広がっていきます。鼻水などのついた手で触られたドアノブ、手すり、つり革などを触ると、手にウイルスがつきます。そしてその手を洗わずに食事をしたり、小さいお子さんなら鼻をほじったり指しゃぶりをしたりすると、体の中にウイルスが入ってしまうのです。
予防のためには、インフルエンザの予防接種をしっかり受けて、手洗いをとにかくこまめにすることが大切です。そして実は手洗いの後にも、風邪を予防する大切なポイントがあります。
みなさんは、手を洗った後、どうやって拭いているでしょうか?
手に水分が残ったまま他のものや食べ物を触ると、乾いた手よりずっと細菌がつきやすくなることがわかっています。1997年にニュージーランドのオークランド大学から発表された研究では、濡れた手でものを触った時と、乾かした手でものを触った時に、付着する細菌の量がどう変化するかを調べています。
■ウイルスを大量に撒き散らしていた!
例えば濡れた手で5秒間グミを触ると、乾いた手で触った時の80倍もの細菌が、手からグミに移ってしまいます。付着する細菌の量を、乾いた手と同じ程度まで減らすには、タオルで15秒間拭くか、温風式ハンドドライヤーで45秒間乾かすことが必要でした。温風式ハンドドライヤーは手を乾かすのに時間がかかるので、清潔なタオルやペーパータオルがあれば、そちらの方が早いようです。こちらの実験に使われたのは細菌ですが、ウイルスでもほぼ同様に考えて良いでしょう。
また、2015年にイギリスのウエストミンスター大学から発表された論文では、ハンドドライヤーやペーパータオルを使った時、周りに飛び散るウイルスの量を比較しています。実験では、ペーパータオルやハンドドライヤーのある場所から40cm離れた場所の、15センチ~1メートル65センチまでの高さの範囲に、合計60個ほどの寒天培地を設置しました。そしてプラスチック手袋をした手にウイルスが入った液を付け、ペーパータオル、温風式ハンドドライヤー、ジェット式ハンドドライヤーで手を乾かしました。