エル・パソは何回か訪ねているが、いつもシウダード・ファレスに泊まる。ホテル代が5分の1ほどになり、食べ物やビールも3分の1以下になるからだ。

 いつもエル・パソ商店街を歩き、50セントの通行料を払って、リオ・グランデ川に架かる橋を渡る。急にゴミが増え、怪しげな女性が近づいてくる。麻薬の売人も多いらしい。そんな男や女を交わして、1泊20ドルほどの安宿を探す。

 翌朝、エル・パソに戻る。いつもは簡単に通過できるが今回、別室に入れられてしまった。僕のパスポートにパキスタンの入国記録があったからだ。トランプ政権になって、急に厳しくなったのだろう。ティファナに集まる中米の人々も、この国境の警備に影響を与えていた。

 別室で調べられている間、次々に怪しげなメキシコ人が職員に連れられて入ってくる。上着を脱がされ、厳しい身体検査を受けている。なんとかアメリカ再入国を許してもらい、検査をパスした別室組と一緒にイミグレーションを出た。

 目の前にエル・パソ商店街。派手な下着が、砂漠の風に揺れている。アメリカに張り出したメキシコ……。

 僕はこんな街が嫌いじゃない。

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