そして短距離路線でも日本史上に残る名馬であるロードカナロアが、圧倒的な強さで日本のみならず世界の競馬ファンをうならせた。2012年に4歳となったロードカナロアは秋にスプリンターズステークスをレコード勝ち。暮れの香港スプリントも制してみせた。さらにロードカナロアは2013年も高松宮記念を勝ち、マイル戦の安田記念をも優勝。スプリンターズステークスと香港スプリントをそれぞれ連覇し、2013年の年度代表馬に選出されている。

 そのロードカナロアと入れ替わるように登場したのがモーリス。2015年の安田記念でG1初制覇を飾ると、その秋にはマイルチャンピオンシップも制覇。さらに香港マイルで日本馬として史上3頭目の勝利を挙げ、この年の年度代表馬に選出された。2016年には春に香港のチャンピオンズマイルを勝ち、秋には2000メートルの天皇賞(秋)をも勝利。最後も2000メートルの香港カップで有終の美を飾るなど、距離適性の広い名馬だった。

 そして平成最後の王者として君臨したのは、演歌歌手の北島三郎氏が事実上のオーナーであることでも話題を集めたキタサンブラックだった。3歳だった2015年(平成27年)の時点では5番人気で菊花賞を勝ったのみにすぎなかったが、古馬となってから覚醒。天皇賞(春)をハナ差で制すると、続く宝塚記念こそ3着に敗れたものの、秋にはジャパンカップを逃げ切り勝ち。5歳になった2017年はG1に昇格した大阪杯の初代王者になると、天皇賞(春)を連覇。秋には天皇賞の春秋制覇も成し遂げ、引退レースの有馬記念でG1通算7勝目を挙げるとともに、通算獲得賞金ではJRAの歴代1位に躍り出た。

 以上、駆け足ではあるが平静を彩った名馬の軌跡を牡馬限定でたどってみた。人によっては「あの馬が取り上げられていない」などの思いを抱くなど至らぬ点もあるだろうが、最強馬談義に正解がないのと同じように、ファンの数だけその人なりの競馬史があるのもまた事実だ。さて、貴方の思い浮かべる平成最強馬はどの馬だろうか?(文・杉山貴宏)

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