普段から、米国が他国の安全保障のために犠牲を払い過ぎているという持論を展開しているトランプ大統領のことだ。「そんなに日本国民が嫌がっているなら、米軍を撤退させてやろう」などとツイートする可能性は十分にあり得る。これは、安倍晋三総理や自民党にとっては、悪夢である。沖縄の基地を最も欲しているのは、彼らだからだ。

 もしかすると、今頃、あらゆるルートを使って、「こんな署名のことは気にしないでください。『共産主義』の連中が騒いでも、安倍政権はびくともしません。日本はどこまでもアメリカと一心同体です。今も着々と工事は進んでいますからご安心ください。武器もますますたくさん買いますから、どうか撤退などとは言わないでください」とトランプ大統領に懇願しているかもしれない。

 ちなみに、本件は、安全保障問題という文脈よりも、あの美しい海が茶褐色の土砂で埋め立てられ、もう二度と戻ってこないかもしれないということで、世界の人々に衝撃を与えた可能性が高い。

 茶褐色の泥が美しいコバルトブルーの海に流れ出している映像を見た瞬間に、欧米先進国の市民たちは、「あり得ない環境破壊だ」と飛び上がって驚いたのではないだろうか。

 これまで、沖縄の基地問題について、日本周辺の安全保障問題を切り離して議論することは難しかった。しかし、今回は、非常にわかりやすい映像が流れたことで、そんな議論など吹き飛んでしまった。環境問題にほとんど関心のない安倍政権には、この反応は想定外だったのではないだろうか。

 この「事件」は、あらためて、日本は先進国ではないという印象を世界中に広めることになってしまった。

◆県民投票をめぐる世論誘導を始めた安倍政権

 この署名運動でも挙げられている、2月の県民投票では、既に不参加を表明していた沖縄、宜野湾、宮古島の3市に加え、石垣市も1月11日に不参加を正式表明した。4市の有権者数とその県民全体に占める割合は、2018年9月30日執行の知事選時点の数字で計算すれば、沖縄10万9019人(9・5%)、宜野湾7万5547人(6・6%)、宮古島4万3422人(3・8%)、石垣3万8687人(3・4%)で、計26万6675人、県全体の23.3%を占める。

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県民投票を逆に安倍政権が利用する可能性