とはいえ、COPYTRACKに事後ライセンスの交渉を一任できるようになったdapandaさんは、負担が大幅に軽減し、同社のサービスに感謝しているという。
「以前、無断使用者に使用料を請求したところ、その人が地元の警察署に『お金を要求する詐欺メールがきた』と駆け込んだことがありました」
ある日突然、愛媛県内の警察署から電話があり、「詐欺行為をしているのか?」と言われたという。著作権侵害という法律を犯しているのは無断使用者であって、正当な主張をしているdapandaさんを詐欺者扱いするのは本末転倒も甚だしい。
「こちらは相手のほうこそ著作権侵害をしていると説明したのですが、その警察官自身の著作権に関する知識がなさすぎて、まったく理解してもらえませんでした」
説明を尽くしてなんとか詐欺ではないことは理解してもらえたが、「それは民事なので直接やってください」と言われたという。著作権法違反は立派な刑事事件であるにもかかわらず、最後まで理解されなかったということになる。
dapandaさんはこうしたやり取りを重ねるにつれ、憤りを感じるとともに、無力感も覚えるという。
「いくら『お酒を飲んだら運転してはいけない』と言っても飲酒運転がなくならないように、著作権意識が希薄で、安易に無断使用する人に何を言ってもムダなんだろうなと思うことがあります」
相手に説明を尽くしても、言葉が通じない虚しさ。dapandaさんはそんな経験を幾度となく繰り返してきた。それでも、著作権侵害に対して泣き寝入りせず、ブログでも著作権侵害について啓蒙し続けている。その原動力は、自身が撮影してきたウェディング写真の数々にある。
「これらの写真にはたくさんの愛や幸せが詰まっていて、僕にとっては子どものようなもの。それを無断使用され、毎回はらわたが煮えくり返る思いです。新郎新婦さんの肖像権も侵害しているものもあります。勝手に使われたお二人のことを思うと黙っていられないんです」
(文/吉川明子)
※アサヒカメラ特別編集『写真好きのための法律&マナー』から抜粋