なお、1980年代には医学部を志望する女子の割合は20%以下だったが、現在は約40%まで上昇している。最近では、地方の成績優秀な女子は「東大より地元の医学部」を目指す傾向が強くなるほど、医学部を意識する女子生徒が増えていた。

■まさか1次試験で得点操作とは…

 東京医科大に端を発する「女子差別」問題だが、そもそも予備校関係者はどう受け止めているのか。ある予備校関係者は驚きを隠さない。

「2次試験の面接で女子や多浪生が厳しい質問をされ、合格しにくい大学があることは、生徒の合格状況や進学した卒業生から聞いてある程度はわかっていました。でも、まさか1次試験で得点操作が行われていたとは……」

 一連の不祥事を受けて、11月16日、全国医学部長病院長会議は、医学部入試についての規範を公表した。

(1)性別による一律の点数操作は許されない
(2)浪人の年数や年齢で評価に差をつけることは不適切(地域枠では実情に応じて可)
(3)内部進学や卒業生の子らの入学は、入学者の受け入れ方針で示して公平性を確保できれば容認
(4)卒業後、一定期間地元で働くことを条件に奨学金を受けられる地域枠は、社会に説明可能な範囲内で、入試要項に明記すれば容認

 各大学はこれらの規範に沿った対応が求められ、違反した場合には処分の対象となる。

■差別入試の背景には、医療が抱える「偏在」

 女子や多浪生を差別する大学がある背景には、医師不足の地域がある一方で都市部に医師が集中するといった医師の偏在と、診療科による男女の偏在という問題などがある。医学部に強い家庭教師センター・名門会の久保田達哉教務本部副部長は、自分の体験をまじえてこう話す。

「私が目の手術を受けた病院、その後通院した別の病院の眼科でも、全員が女性医師でした。妻が里帰り出産をしようとした時、医師不足により、実家の近くの病院の産科が閉鎖されていました。このように、医学部入試の問題だけではなく、地域や診療科など医師の偏在の問題を、まず抜本的に解決しなくてはならないと感じますね」

 AERAムック「医者・医学部がわかる2018」によれば、女性が多い診療科は、皮膚科、眼科、麻酔科、小児科、産婦人科など。出産後、1年ほどで医師を再開するケースもあれば、しばらくお休みするケースもある。麻酔科のある女性医師はこう話す。

「仕事と家庭を両立させ、子どもも産みたかったので、主治医にならなくてもいい診療科を希望。オンとオフがはっきりしていて、夜中に呼び出されることがまずない麻酔科を選びました。昨年、子どもを出産したので、現在は育児のために医師の仕事はお休みしています」

 さまざまな問題の改善を望むためには、医療の“これから”を担う学生の視点も重要だ。年が明けてセンター試験も終われば、いよいよ医学部入試が本格化する。面接を含めて公平な入試であってほしい。

(文/庄村敦子)