まもなく平成が終わろうとしているこの時代とは到底思えない「質問」ではなかろうか。
「あなたは子どもをつくりますか」
「なぜ看護師ではなく、医師なのですか?」
「子どもを産んでも医師を続けますか」
これらは、ある医学部の面接試験で、女子の高校生や浪人生が面接官から投げかけられた質問だ。
医系専門予備校メディカルラボは、生徒から面接試験の内容の報告である「受験レポート」を、例年収集している。過去3年間の内容を見ると、多くは将来医師を目指すにあたり「なぜ医師を目指すのか」「理想の医師像とは?」といったまっとうな質問が並んでいる。だが、こと女子への質問に注目してみると、上記のような「時代錯誤」とも「トンデモ」とも取れるような質問もあり、耳を疑う。
最難関の呼び声高い医学部入試で、「点数操作」や「多浪生排除」など次々発覚する不祥事に注目が集まっている。東京医科大などに続き、8日、さらに岩手医科大、金沢医科大、福岡大がそれぞれ会見を開き、医学部で「不適切な入試を行っている」と文部科学省から指摘されたと公表した。いずれも、特定の受験生を優遇するなどしていたという。
そもそも近年の医学部のトピックといえば、東京大が2018年入試から面接を11年ぶりに復活させたことだった。これで、全国82の医学部のなかで面接がないのは九州大だけ。それほど、医学部では「面接重視」の動きが強まっているとも言えよう。理由は、医学部の面接は単なる入試ではなく、将来の医師としての就職試験、採用試験の意味合いも強いからだ。
なお、国公立大では、面接に時間をかけるために、センター試験の点数で受験生の数の上限を決める「2段階選抜」を導入する大学が増加。また、近年では、新しい面接方法「MMI(マルチプル・ミニ・インタビュー)」を導入する大学も現れた。これは、複数の部屋が用意され、各部屋の面接官が1人の受験生に異なったテーマの質問を行い、理解力、思考力、表現力などをはかるもの。国公立の千葉大、横浜市立大、私立の東京慈恵会医科大、東邦大、藤田医科大などが実施している。また、国際医療福祉大は30分×2回、計1時間もの時間をかけて面接を行っている。
■高校生に結婚や育児の質問をしても…
メディカルラボ本部教務統括の可児良友さんは、女子への面接での質問内容についてこう分析する。
「仕事と家事や育児の両立、女性医師のメリット、デメリットなどを質問する大学が多いですね。高校生の若い生徒たちは結婚や育児について聞かれてもまだピンと来ないでしょうが、理想とする医師像などについて考え、医師として働き続ける意思を伝えることは大切です」
また、ある医学部予備校の幹部関係者は、こう言う。
「面接の練習のとき、丁寧にアドバイスをしていますが、正直『ちょっと危ないかな』と感じた生徒が残念な結果に終わることがあるため、面接官はしっかりと受験生を見ていると思いますね。ただ、全体的に、女子は医学部に入るのが難しい感じがします」