言わずもがな、面接をするのは「人」だ。大学によって質問内容に差が生じるのは当然だ。もちろん、理不尽に思える質問も、人が行うがゆえに多少は目をつむらなければいけない状況もあるかもしれない。
しかし、だ。
まだ高校生の生徒たちに冒頭のような「子どもをつくるのか」などの質問を浴びせるのは、少なからず「女子が医師になること」へのゆがんだ意識が根底にあると受け止められても仕方ないだろう。
他にも“気になる”質問を列挙すると、
「熱を出した自分の子どもを迎えに行かなくてはならないが、一方で外来患者がたくさん待っていたら、どうするか」(私立大)
「子どもがいて、夫がロンドンへ留学すると言ったら、あなたはどうするか」(国立大)
「結婚して夫が『東京について来て』といったらどうするか」(私立大)
「結婚や出産で男性よりも家庭でがんばることになるが、どう思うか?」(私立大)
「女性が働く際の問題点は?」(国立大)
「小児科医になる覚悟はある?」(私立大)
現役生だとしたらまだ18歳ぐらい。このようなことを大学入試の面接の場で聞かれて返答に困る姿は想像に難くない。なかには、「ドクターX」など人気ドラマを持ち出して高校生でもわかりやすく質問をしようと試みたのかもしれないが、こんな尋ね方をした大学もあった。
「ドラマなどで女性医師が活躍しているが、失敗もする。ミスをしたときにどう対応するか」(私立大)
■患者の死亡率が低いのは男性医師より女性医師
一方で、面接では「女性医師の増加」や「女性医師の働き方」についての質問も多く、これらの問題に対する対策・解決法を問う大学も少なくない。女性医師だけではなく、将来、女性医師となる可能性を秘めた受験生にも対策案などを尋ねている。
「女性医師の働き方について具体的な対策はあるか(国立大)
「女性が働きやすい職場にするにはどうすればいいか」(私立大)
「女医の勤務についてどのようなサポートが必要だと思うか」(私立大)
「女性医師が子育てなどと両立するために職場に求めるもの」(国立大)
確かに、労働環境の改善は喫緊かつ重要な課題といえよう。そうした環境下で、近年、女性医師の活躍に注目度は、年々高まっている。
16年12月には、米国医師会の学会誌『JAMA Internal Medicine』に、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)助教授の津川友介医師による「女性内科医が担当した入院患者は、入院日から30日以内の死亡率や退院後30日以内に再び入院する再入院率が低い」という調査結果が掲載され、SNSなどで大きな話題になった。具体的には、内科系の病気で入院した65歳以上の高齢者およそ130万人のデータを解析した結果、女性医師の担当患者の死亡率は11.1%、再入院率は15.0%。男性医師の担当患者の死亡率は11.5%、再入院率は15.6%で、統計学的に意味のある差が現れた。この論文は翌17年、論文を評価するイギリスの調査会社が発表した「世界で影響を与えた科学論文」で3位に入るほどだった。