風邪やインフルエンザ、ノロウイルスなどの感染症が流行する季節になってきました。細菌やウイルスには、咳やくしゃみの飛沫から直接感染することもありますが、手を介して感染することも多いと考えられています。誰かの汚染された手で触られた物や、飛沫がかかった物を触ることで、私たちの手には簡単に細菌やウイルスがついてしまいます。そこで重要なのが手洗いです。今回は、風邪などの感染症を予防するための手洗い方法、ハンドソープの選び方についてご紹介します。
手洗いの重要性を世界で最初に指摘したのは、ハンガリー出身の医師であるゼンメルワイスです。彼は、医療従事者の手の消毒により産褥熱(さんじょくねつ)を減らすことができることを1847年に発見しました。当時は微生物が感染症の原因となっていることはわかっておらず、激しい反論にあいましたが、その後ゼンメルワイスの正しさは科学的に証明されました。
現在では産褥熱だけでなく、風邪など多くの病気が微生物の感染が原因となっていることがわかり、一般の人にも手洗いが推奨されています。とはいえ、手洗いの効果はなかなか実感できるものではなく、日常生活でこまめな手洗いを続けるのは難しいものです。石けんを使ったほうが良いとわかっていても、トイレに行った後など、水で手洗いすることも多いと思います。水だけと石けんでは、どのくらい手洗い効果に差があるのでしょうか?
■石けんは手をこすり合わせる時間も長くする
ロンドン大学衛生熱帯医学大学院から2011年に発表された研究では、20人のボランティアが協力し、公共の場所の手すりなどを触って手洗いした後に細菌がどれくらい残っているかを調べました。ここで調べた細菌は皮膚の常在菌ではなく、腸に住み着いている菌、つまり便由来と考えられる細菌です。この研究では手洗い方法のレクチャーはなく、ボランティアの人がいつもやっている方法で手洗いしてもらっています。
すると、便由来の細菌が検出されたのは、全く手洗いしないと44%、水だけで洗うと23%、石けんを使って洗うと8%でした。石けんを使ったほうが、手の汚れや微生物を浮き上がらせて落とすことができ、物理的に手をこすり合わせる時間も長くなるため、効果が高くなると考えられています。