トライアウト後に開催するドラフト会議も、今回は両リーグ合同で開催する。ただ、15球団が一堂に会するとなると、その会場や各球団の移動経費などがかさむ。そこで、15球団をネット中継で結び、指名を行うことも決まった。1巡目指名は「入札方式」で、指名希望の選手が重なれば抽選をおこなうのだが、その場合、NPBのドラフト会議のようにクジを引けないので、今回は“ネット上でのあみだくじ”方式が検討されているという。

 このように、2つのリーグが一体で動くことで、無駄を省くという効果は大きい。これと同時に「経済効果」という面も見逃せない。丸亀でのトライアウトでも受験者、両リーグや球団の関係者らで宿泊が必要な人数を120人と見積もったとしても、丸亀市内に「200泊分」の宿泊が生まれる。これは見方を変えれば「四国の外から人を呼び込んだことになる」と坂口理事長。人口減少、少子高齢化の流れの中で、活気が失われつつある地方で、いかにして人を呼び込む“仕掛け”を作れるのか。「こういうことが、地方創生の1つじゃないですか?」という坂口理事長の問いかけには、うなずける部分が多々ある。

 独立リーグから、ドラフト指名を受けてNPBに進む選手も年々増えている。今年10月のドラフトでも、本指名、育成指名を含め、BCL6人、四国IL1人の計7人。独立リーグという存在は、野球界においても、一定の地位を占めるようになってきている。とはいえ、その「野球」のみに注目するのではなく、「野球」を核とした地域貢献、経済効果を生み出せる「ビジネスとしての発展」がなければ、独立リーグの、いや、プロスポーツとしての“今後”は、難しい時代に入ってきている。

 各リーグでの成長、発展、創意工夫はもちろん不可欠な要素ではある。ただ、独立リーグ界全体として、その将来を見通したとき、小異を捨てて大同につくという“大局観”もまた、必要になってくる。

「パイの奪い合いはしない。野球界として、すそ野を広げていくことで、その可能性も、多様性も広げていく。自分たちの価値を、どれだけ上げられるかです」と坂口理事長は強調する。異例の“合同入団テスト”は、まさしく、そのための第一歩とも言えそうだ。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス中日ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。