個性派俳優、佐藤二朗さんが日々の仕事や生活の中で感じているジローイズムをお届けします。
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「6歳の息子さんに、将来どんな大人になって欲しいですか」。これ、取材などでよく聞かれる質問です。それに対し僕は、「気持ちのやさしい人」とか「心がちゃんときれいな人」とか、うーむ抽象的だなあと思いつつも、いつもそんな感じで答えています。
でもぶっちゃけ、だらだら長くなってもいいなら、たくさんあるんですよね。「自分のやりたいことをやれる人」、「自分のやりたいことでなくてもそれを笑顔でやれる人」、「人に迷惑を掛けない人」、「立っていられないような逆境にあっても歯を食いしばって前を向ける人」、「別に変わってなくていいから普通の生活を笑って送れる人」、「変わってたとしても人と違うことを気にせず毎日を楽しく送れる人」…etc、etc。まあ、その当人は今、チョコを口の周りにべっとり付けて一心不乱にアイスを食べてますが。
以前、僕はツイッターに「一流大学? 勿論入れた方がいい。一流企業? 勿論入れた方がいい。ただ息子よ。父いま酔ってる。酔ってるが言いたい。人の不幸をちゃんと悲しむ。人の幸せをちゃんと喜ぶ。そっちの方が、遥かに、遥かに尊い。酔ってる父は、わりとそれを断言したい」と呟きました。自分でもビックリするくらいの反響があり戸惑いましたが、同時に反省もしています。実際にリプで何人かの方からご指摘を受けたように、一流大学や一流企業に入ることと比べる必要はなかったと思うからです。無論、一流大学や一流企業に入るために、一生懸命努力することは尊いことですし、僕も息子には綺麗事だけでなく、競争に勝つ(負けることは当然あったとしても)、勝つための努力ができる人、強さを持つ人になって欲しいという気持ちもあります。
僕は20年前、小劇場の舞台に立っていました。僕が28歳から30歳までの間、「自転車キンクリート」という団体に所属していました。3年間という短い期間でしたが、 その団体で一番下っ端だった僕は、そこで多くのことを学びました。