それでも、後方からのロングボールを身体に収め、前を向いた2列目の選手に渡す能力に関しては大迫の方が優れていることに疑いの余地はない。鈴木のスペシャリティーは、ゴール前で自分より大きなセンターバックとも粘り強く競り合い、有利な態勢で味方にボールを落とせる、ゴールに直結するポストプレーだ。ディフェンスを自身に引きつける動きもそれと関連する。鹿島では、この形から相棒のFWセルジーニョやサイドアタッカーの安部裕葵、土居聖真、時にはボランチのレオ・シルバやサイドバックの内田、西大伍にまでフィニッシュのチャンスを提供している。

 基本的に相手のディフェンスを引きつけながら、チャンスがあれば効果的な動き出しから味方のクロスやラストパスに合わせ、豪快にゴールネットを揺らす。特にカウンターの局面ではゴール前のスペースへ最短距離で走り、フリーでフィニッシュする場面も少なくない。浅野ほどの爆発的なスピードがあるわけではないし、北川ほどドリブルの技巧はないが、相手の嫌がるポイントを感性で嗅ぎとれるセンスと、ゴールへの執着心がある。また、試合終盤になり、接戦になるほどフィニッシュで違いを生み出せる勝負強さもあり、大迫が順当に先発する試合でも、“試合を終わらせる”選手として森保監督に重宝される可能性も十分ある。

 2011年のアジアカップではサブの一人だった李忠成が決勝ゴールを挙げ、日本を優勝に導く大仕事でヒーローになった。鈴木のメンタルの強さは折り紙つきで、日の丸のユニフォームに臆することはないだろう。日本代表の活動期間は短く、2試合の中でどれだけ時間を与えられるかも分からないが、その中でも持ち味を発揮して来年1月のアジアカップのメンバーに残り、UAEの地で“大迫のバックアップ”以上の存在になっていくことは期待できる。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の“天才能”」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。

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