それから4年。たったの4年でかなり環境が変わったように感じる。今回表彰した4部門のうち、3つは作品が絡んでいて、しかも、ダイレクトに"主夫"というキーワードが作中やPRに用いられている。この事実が表すことは"主夫"という言葉自体が、一般化、つまり "説明しないでも伝わる"ものになってきたということだと思う。
もちろん"主夫"という言葉は新しいものではない。阿部寛さんが主夫を演じたことでも話題になったドラマ「アットホーム・ダッド」が火曜22時といういわゆるゴールデンタイムに放送されたのは2004年、もう14年も前のこと。思い返してみると我が家は長女が生まれて3ヶ月、当時はまさか自分が主夫を名乗ることになるなんて思ってもいなかった。思えば、スマホもLINEも無かった時代(今では考えられない!)。このドラマで描かれたのはリストラをきっかけとした"仕方なく主夫になった"というケースで、決して積極的に家事育児に参加したわけではないし、どちらかというと"男性にも女性の大変さをわかってほしい"という部分が感じられる部分が多かったように感じる。割と最近に至るまで主夫に限らず、子育てをする男性は"かわいそう"というイメージが漂っていた。親権争いの裁判を描いたアメリカの名作映画「クレイマー、クレイマー」も然り。
ところが最近は、その傾向は少し変わりつつある。むしろ"主夫になることを選択し、その生活を楽しんでいる様子"を伝えてくれる作品が出てきたと感じる。
その象徴的なモノが今回アワードを受賞した劔さんのコミックエッセイ「今日も妻のくつ下は、片方ない。」である。劔さんはコラムニストやテレビのコメンテーターなどとして活躍する犬山紙子さんと結婚したことをキッカケに兼業主夫になった。もともと家事や育児が得意だったわけではない。それでも少しずつ努力して前に進んでいる姿が綴られている。