描かれている姿は"なんでもできるスーパー主夫"ではなく"不器用だけど頑張っている普通の主夫"。そのリアルな姿こそが共感を呼び、好感を持たれるのだと思う。「寝る間を惜しんで働いていたけど、主夫になって、"人間らしい生活"が出来るようになったので、本当に良かったと思っています」授賞式で劔さんが主夫生活に対して賛辞を述べたのも印象的だった。

■「専業主夫の方はいませんか?」

 それでもまだ"主夫"に対する偏見のようなモノは根強い。テレビ番組や雑誌、大学生から主夫の話を聞きたいという依頼は増えているが、そのほとんどは「専業主夫の方はいませんか?」というものだ。そして「男性なのに妻よりも収入が少ないことに苦悩している方」とか「収入の低い夫と暮らしていることについて語ってくれる女性」といった条件が次々と出されることも多い。"主夫"の存在そのものは受け入れているけれど、家事育児の尊さが認められた訳ではなく、どうにも収入によるヒエラルキーをつけたがる傾向は変わらない。しかもそれは男性だけでなく、女性も。そして、こちらが「あまりそういう人はいない」と伝えると非常に残念そうで、なんだか申し訳ない気持ちになる。

 どうやら、様々な作品に登場するようにはなったものの、我々はまだ"普通"ではないようである。もちろん"普通"であることにこだわっているわけではないので、主夫として暮らしているところもあるが、"変わった人"扱いはやはり変わってほしい。授賞式の中で劔さんは、自著について「男性にも読んでもらいたいけど、むしろ"男性と女性の役割分担"という価値観に縛られて悩む女性にも読んで欲しい」と言ったが、まさに我々も思いは同じ。これは男性だけの問題ではなく、女性も含めた社会全体の問題であり、変わっていくには時間がかかることも承知だ。それを少しずつでも変えてためにはこういったイベントなどを通じて様々な夫婦のカタチを伝えていくことを続けていくことが大切だと感じてならない。(文/「秘密結社 主夫の友」・杉山ジョージ)

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