野球の母国アメリカで150年以上の歴史を持つメジャーリーグ。長きに渡り野球というスポーツが研究されてきたが、今日に至っても新たな作戦のトレンドが毎年のように生まれ、各チームがより多くの勝利を掴むために様々な“実験”がなされている。
そして今シーズンも野球の根本を覆すような新戦術が誕生した。それは主にタンパベイ・レイズなどが採用している、試合の初めからリリーバーを起用するというもの。現代の野球では先発投手が試合の中盤から終盤までを投げ、そこから救援投手につなぎ、リードを守り切るというのが正攻法の戦い方だ。しかし、この戦法ではいわゆる先発投手という概念がなく、初回からリリーフ投手が起用され1イニング、もしくは2イニング程度ですぐにマウンドを降り次の投手につなぐというもので、これまでの常識を完全に覆している。
もちろん、重要な試合でチームのエース級の投手を何人もつぎ込み勝利につなぐという戦略は過去にもあったが、レイズはシーズンの大半でこの戦略を採用。当初はこの投手起用に疑問の声が上がっていたが、今季の数値を見る限りは成功したといってもいいほどの成果を上げている。
今シーズンのレイズ投手陣の顔ぶれを見ると、今年ブレークを果たし、21勝(5敗)をマークした左腕ブレイク・スネルを除くと、なんとも頼りない陣容。しかし、今季はア・リーグ全15チーム中で2位のチーム防御率3.74を記録。開幕からレイズに所属し100イニング以上投げているのは実質先発投手のスネルとライアン・ヤーブローだけで、他チームで100イニング以上を投げた投手の平均人数(約4.5人程度)と比べると少なく、うまく投球回数を分散させて好成績につなげているのかが分かる。そして、9月2日には1シーズンのリリーフ陣合計の投球回数(658回2/3)がメジャー歴代最多となった。
レイズの投手起用が顕著に現れた例の一つがセルジオ・ロモで、5月19日から27日の9日間の間に、4度先発マウンドへ上がった。しかし、投球イニングの合計はわずか3回1/3で、27日の試合では初回に1死満塁のピンチを迎えたところで、早々と次の投手にマウンドを譲っている。また、ライン・スタンエックは59試合中29試合で先発したが、シーズンの成績は2勝3敗。投球回数も66回1/3となかなかお目にかかれない珍しい数字となっている。