ママタレはダメ、絶対。
私の好きな前田作品には、共通点がある。「地方」「ジャージ」「腹ばい」。その3つだ。
たとえば9月1日に放送されたドラマ「学校へ行けなかった私が『あの花』『ここ咲け』を書くまで」(NHK・BSプレミアム)がそれ。アニメ脚本家・岡田麿里による同名の自伝が原作。すっごくよかった。
前田が演じたのは、ヒロイン安喜子。舞台は秩父。山に囲まれた街を、「緑の檻」と表現する。小学校でいじめられ、不登校に。なんとか高校生にはなったけど、やはり半年で不登校。だからずっと家にいる。
前髪をゴムでしばっている。着るのはいつでもTシャツで、下は必ずジャージ。もちろんアディダス的なカッチョいい系ではなく、ユニクロ的なおうちダラダラ系。
寝ている以外はゲームをするか、腹ばいでマンガor小説を読んでいる。たいてい口にはお煎餅(夏はたまにアイス)。
ある日、読む本がなくなり、意を決して外に出る。「登校拒否児はちょっと出かけるのにも武装が必要だ」と独白が入る。選んだのは、長いふんわりしたスカート。
ハンドルに顔がつきそうな感じで自転車を漕いでいく。スカートの裾が後輪に巻き込まれ、引っ張るとスカートが腰のところで破れる。近くのおじさんに「おい姉ちゃん、ケツが見えてるよ、ケツ」と言われる。「わかってます」と答え、裂け目を押さえながら引っ張る。ますます破れる。「ケツ、ケツ。ケツ」というおじさんを置いて、自転車を押して帰る。
半ケツの安喜子が、笑えて、切ない。
その晩、母親(富田靖子)と喧嘩になり、興奮した母が包丁を手に。「ちょっと、冷静に」と言いながら、まずお煎餅の入った菓子鉢で、次に座布団で防御。母を逆に取り押さえる。母は「こんなにデカくなっちゃって、殺せるわけがない」と泣く。「だよね。ごめん」と安喜子。
そして2人はインスタントラーメンを食べる。富田はよい姿勢で。前田は丼に顔を近づけ、左手ですくった麺をすする。安喜子という少女の、やるせなさが浮かぶ。