AERA 2023年7月24日号より
AERA 2023年7月24日号より

 中身もさることながら、改正の「スピード感」も気になるところだ。定年間近の中高年にとって、急な制度変更は「約束違反」に等しくなる。突然、退職金の手取りが減ると言われても、急なライフプランの変更はできないし、退職金で住宅ローンを完済しようと思っている人は計画自体が狂いかねない。

 ある税法の専門家は、相当な年数をかけないと納得感は得られないのではと心配する。

「改正するにしても、完了するまでに10年単位の経過措置が必要になるのではないでしょうか。厚生年金の支給開始年齢が20年以上かけて60歳から65歳に引き上げられているように、ゆっくりゆっくり進めないと、うまくいくとはとても思えません」

 ともあれ「退職金増税」の方針は固まった。次の注目は年末に与党が作る来年度へ向けた「税制改正大綱」になる。一気に改正の中身やタイムスケジュールまで提示できるのか、それとも……。中高年の勤め人は目が離せそうもない。(編集部・首藤由之)

AERA 2023年7月24日号より抜粋

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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