首都圏で発売された新築マンション1戸あたりの平均価格は1億円を超えた(撮影/写真映像部・高野楓菜)
首都圏で発売された新築マンション1戸あたりの平均価格は1億円を超えた(撮影/写真映像部・高野楓菜)

 首都圏の新築マンション価格の高騰が目立っている。ただ、かつてのバブルとは様相が異なるようだ。高騰の理由は何か。AERA 2023年6月12日号より紹介する。

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 最近、マンション価格の高騰について報じるニュースが目立つ。たとえばNHKは、3月に首都圏(1都3県)で発売された新築マンション1戸当たりの平均価格が初めて1億円を超えたと報道。5月中旬にも、東京23区の新築マンション平均価格が4月時点で1億1773万円に達し、前年同月比60.3%の上昇を示したとのニュースを発信した(いずれも不動産経済研究所の調査結果)。

 マンション価格の高騰と聞けば、中高年世代の多くは1980年代後半のバブル期を連想するかもしれない。当時は、不動産価格や株価が派手に上昇し、資産インフレと呼ばれる現象が鮮明に。だが、バブル崩壊とともに流れは反転し、2005年頃までは逆に資産デフレが続いた。

 あの頃の重苦しい記憶が蘇り、「今回も最終的にはバブルが弾けるのではないか?」と考える人も少なくないだろう。一方で、世界的にインフレ傾向が強まったことが建材価格などの高騰をもたらし、今後もコストの高止まりでマンション価格は高水準で推移するとの見方もある。果たして実際のところ、今後のマンション価格はどのように推移していくのだろうか?

AERA 2023年6月12日号より
AERA 2023年6月12日号より

■上昇は長期的現象

 不動産コンサルタントの第一人者で、個人向け不動産コンサルティング会社・さくら事務所の創設者(現会長)である長嶋修さんは、まずインフレの影響について次のように述べる。

「コロナ禍の供給不足で建材や設備機器が高騰し、ここ2年程度はその影響を受けたのも確かです。しかしながら、すでに一段落しており、足元における平均価格の上昇は他の要因がもたらしていると言えるでしょう」

 そもそもマンション価格の上昇は目先だけの現象にとどまらず、長期的に続いてきたトレンド(潮流)だったという。90年代初頭のバブル崩壊以降、日本の不動産市場は長く低迷してきた。05年頃からようやく上向きに転じたものの、08年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災で頓挫。今日まで続く本格上昇の起点となったのは、12年末に現実となった民主党(当時)から自民党への政権交代だった。

「黒田(東彦)日銀前総裁が異次元の金融緩和、安倍(晋三)政権がアベノミクスを推進したことを受け、10年近くにわたって上昇局面が続きました。新型コロナの感染拡大で何度も緊急事態宣言が発出されたのを踏まえて、そろそろ一服するのではないかとの見方が強まったものの、フタを開けてみると、むしろさらなる上昇を遂げました。リモートワークの普及で自宅の在り方を見直す動きが広まったうえ、一段と低金利が進んだことも追い風となりました。その後も3年間にわたって上昇トレンドが続き、今日に至った次第です」(長嶋さん)

(金融ジャーナリスト・大西洋平)

AERA 2023年6月12日号より抜粋

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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