東京大学は世帯年収が高い家庭出身の学生が多いと言われる。家庭環境などで学力や最終学歴に差が生まれることが問題視されるなか、改革も試みられているが、新たな問題も生じている。AERA 2023年3月6日号の記事を紹介する。
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教育格差の拡大は税制にも問題があると指摘するのは、元文科事務次官の前川喜平さんだ。経済的に豊かな人が、より教育費用を投じやすい環境になっているという。
「今の税制はお金持ちを優遇しています。祖父母や親が、孫や子に教育資金を一括1500万円まで非課税で贈与できます。大学の入学金や塾の費用にも充てられます。私が現役のときに導入された制度ですが、格差是正どころか、格差拡大を招いています」
こうしたなか、教育格差を是正しようという動きは出ている。東大合格者数が41年連続1位の開成高校は15年に、開成中学は20年に授業料免除の「開成会道灌山奨学金」を始めた。対象は年間所得218万円以下、または給与収入400万円以下の世帯だ。合格すれば、成績上位でなくても免除される。
中学からの場合、6年間の授業料、施設維持費など計約476万円を免除する。自己負担はPTA会費、修学旅行費など75万円程度。公立校に通うのと変わらないくらいの負担額だという。利用しているのは1学年数人で、卒業生は二十数人に上る。野水勉校長は言う。
「開成で良い教育を受けられた、という卒業生たちの寄付によって実現しました。保護者の年収の統計を取っていないのでわかりませんが、比較的安定した収入を得ている層が多いとは思います。とはいえ、例えば夫婦のトラブルなどで離婚することになって経済的に厳しくなる家庭もあります」(野水さん)
■首都圏の公立校の復活
一時低迷した首都圏の公立校の「復活」も注目されている。22年、東京都立日比谷高校からは65人、神奈川県立横浜翠嵐高校からは52人が東大に合格した。00年代には東大現役合格者が1人の年もあった横浜翠嵐の躍進の理由について、加藤俊志校長はこう話す。
「公立高校ならではのメリットもあるんです」