AERA2022年10月10-17日合併号より
AERA2022年10月10-17日合併号より

 元財務官僚で菅政権では内閣官房参与を務めた高橋洋一・嘉悦大学教授も「円安は日本経済にとってプラスは常識」と言い、物価対策は財政措置で対応すべきという立場だ。

 その財源は政府の外国為替資金特別会計で保有する外貨証券約120兆円の円安による評価益数十兆円を使えと言う。かつて話題になった「埋蔵金」が円安で増えているのだ。

「円安で一番儲けているのは政府だ。その数十兆円のお金を使い物価高で苦しむ人や中小企業を助ければいい。上場企業は高収益だから税収も増えるはず。為替介入は必要なかった」

 まさに秋の臨時国会で議論されるテーマであろう。

 円安は良いのか悪いのかの議論は、いわば全体最適を考えるのか部分最適を考えるのかの議論である。全体ではプラスだが、部分をみるとマイナスもある。さてどちらを優先するかというバランス論だ。昨今の「円安は悪い」に傾いている風潮がやや心配である。(経済ジャーナリスト・安井孝之)

AERA 2022年10月10-17日合併号より抜粋

>>【前回の記事】円安で企業の業績好調も、賃金の伸びは小さい現状 課題は経営者の積極姿勢の欠如か

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安井孝之

安井孝之

1957年生まれ。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京、大阪の経済部で経済記事を書き、2005年に企業経営・経済政策担当の編集委員。17年に朝日新聞社を退職、Gemba Lab株式会社を設立。著書に『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。

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