空腹の状態や、寒い場所で勉強するのも効果があると言われています。海馬は「命にかかわる」情報を記憶します。空腹や寒さは命にかかわります。つまり小腹が減っている状態や、少し寒い部屋で勉強をすると、脳がだまされて記憶力アップが期待できるという仕組みです。

 あと、部屋に赤いものを置かないこと。過去の研究で、問題は変えずに問題用紙の表紙だけいろいろな色に変えたところ、赤色の表紙で受験した人の点数が低かったという結果が出ました。解答欄のどこかに赤色が入っているだけでも点数は低くなったので、赤色は点数を下げる効果があると言われています。だからカーテンや家具など、部屋から赤い色は排除したほうがいいでしょうね。

■水を飲むと点数上がる

──テスト前に水を飲むと点数が上がる、と聞いたことがあるのですが。

 それは多くの研究者の論文が出ているので、ほぼ間違いないと思います。テストの20分前に、250ミリリットルほどの水を飲んだ生徒の点数が10%上昇しました。大人の場合は500ミリリットルほど飲むと、判断スピードが速まったそうです。

 人間は体重の60~70%が水なので、数%失われただけで体調に変化が出ます。飲み過ぎはダメですが、夏なんかは特に体内が水不足になりやすいですし、出勤したあとや登校したらコップ1杯ほどの水をまず飲むといいと思います。ちなみにお茶やコーヒーには利尿作用があるので、かえって水分を失ってしまうので注意してください。

──ここまで脳のクセを知りながら、いろいろな勉強法や集中力の高め方をうかがってきました。あとは、実践し継続できるといいのですが……。

 やる気はやり始めないと出ません。だから余計な感情を挟み込まずにまずは始めることです。システムに身を置き、感情を挟まずにやるのが長く続けられるコツでしょうか。やり続けたら毎日の習慣になり、逆にやらないと、何か物足りないと思えるようになります。もちろんそれは簡単なことではないし、できるならみんなやっていますよね。でも、脳をだましながら効率よくやることはできます。知っているか知らないかでは大きな違いがあると思いますよ。

(構成/編集部・大川恵実)

AERA 2022年7月18-25日合併号より抜粋