ところが今年の戦勝記念日は、プーチン氏によって「ロシアのため」と位置づけられてしまった。随分とちっぽけな日にしてしまったなあ、というのが、私の率直な感慨だ。

 プーチン氏が締めくくりに述べた「勝利のために」もそうだ。これが77年前の戦勝のことではなく、今行われているウクライナでの戦いに勝利を誓った言葉であることは明らかだ。

 第2次大戦終戦という歴史的意義を忘れ、目の前の戦いで頭がいっぱいというプーチン氏の実態が、はっきりと見て取れる演説だった。(朝日新聞論説委員・駒木明義)

AERA 2022年5月23日号より抜粋

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駒木明義

駒木明義

2005~08年、13~17年にモスクワ特派員。90年入社。和歌山支局、長野支局、政治部、国際報道部などで勤務。日本では主に外交政策などを取材してきました。 著書「安倍vs.プーチン 日ロ交渉はなぜ行き詰まったのか」(筑摩選書)。共著に「プーチンの実像」(朝日文庫)、「検証 日露首脳交渉」(岩波書店)

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