■「アメとムチ」の手法

 近年は、辺野古新基地建設をめぐる県のスタンスと、国の沖縄関係予算がリンクする構図が可視化されるようになった。秋山さんはこう説く。

「可視化された一因として、公共事業を通じた『豊かさ』の演出が難しくなった面もあると思います。だからこそ、沖縄開発庁が官邸の影響を受けやすい内閣府に再編されたともいえます。1995年の『少女暴行事件』以降は基地所在市町村にピンポイントで予算配分する振興策や米軍再編交付金なども含め、県民が『基地がないと経済が成り立たない』と意識させられる方向に誘導する『アメとムチ』の手法も顕著です」

 日本をめぐる安全保障環境が厳しくなる中、本土では基地に反対すること自体、ネガティブに捉える空気が広がり、これが「沖縄は振興策で特別扱いされている」との見方と相まって、差別やヘイトにつながる傾向も浮かぶ。だが沖縄には、全国の7割超の米軍専用施設が集中し、さらに自衛隊の「南西シフト」も進む。有事に戦争に巻き込まれるリスクや、「過重な基地負担」の解消を求める沖縄の人たちの声を切り捨てていいはずがない。(編集部・渡辺豪)

AERA 2022年5月16日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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