「前向きにがんばっていきたいという気持ちになります」

 そう話すのは、白石高校2年の亀海優佳(かめがいゆうか)さん(17)。

 普段はクラシックをよく聴くが、中学の時に出た合唱コンクールでハモリの美しさに魅せられた。高校では合唱部で本格的に合唱を始めた。

 合唱の魅力は、指揮者まで一緒になってピタリとハーモニーを奏でること。そして歌声に感情が乗り、自分の思いを伝えられることだという。

 この日合唱した「春」に特に心を込めた。

「ハモリやかけ合いの美しさ。そして歌詞に命を大切にしようというニュアンスが入っていて、命の大切さを感じられる曲だと思います」(亀海さん)

■自宅で練習した成果

 同校合唱部の部員は2人。近くの高校とも一緒に練習をしながら活動を続ける。

 あと1人の部員は1年の古川桜さん(16)。コロナ禍で音楽祭に向けた練習は満足にできなかった。だが、音源をもらい自宅で何度も練習した。この日は、これまでの練習の成果を発揮する場だと思い挑んだ。大好きなリトグリとの共演の後、

「1年の集大成になりました」

 と、満面の笑みを見せた。

 音楽祭の8日前には、宮城と福島を震度6強の地震が襲った。コロナの収束も見えないなか、不安や焦りなどさまざまな思いを抱いている若者も少なくない。そんな人たちにリトグリのMAYUさんはエールを送った。

「みなさんは苦しく険しい道のりを過ごされていると思います。だけど、いま経験していることは絶対いつか何らかの形で自分の力になってくれます。将来に向かって頑張ってほしい」

(編集部・野村昌二)

AERA 2022年4月11日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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