合否判定に使う資料から受験生の氏名や属性を削除した大学が出てきたほか、
「卒業生の子弟のほうが入りやすいとうわさされていた大学もありましたが、公式に同窓会枠が設けられました。明確になってよかった」(可児さん)
ただ、合格率で男性が女性を大きく上回る大学は依然としてある。特に国立大学だ。最も男女差が大きいのは大阪大学で、男性は43.98%と女性を17ポイント以上も上回った。他4校も男性が10ポイント以上高かった。
駿台教育研究所・進学情報事業部長の石原賢一さんは言う。
「国立は前期、後期の2回しか受けられないので、浪人を避けたい女性が少しレベルを下げて受験することもあるでしょう。医学部は偏差値が高いので、厳しそうなら薬学部や看護学部に受験先を変える人もいます。こうした学部は女性の割合が高い」
高校での指導の影響
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師は、こう推察する。
「まだ大学が組織的に不正入試を行っているとは考えづらい。高校での指導の影響が根底にあると思います」
21年度の医学部医学科の合格者数ランキング(大学通信調べ)を見ると、上位10校中5校が男子校だった。
「進学校の男子校は伝統的に国立医学部に合格者が輩出していますから、学校に国立受験のノウハウがあります。久留米大附設高校をはじめとして、国立医学部の合格者が多い共学校も、男子校だった高校が多い。女子校も最近、合格者数を増やしていますが、まだ男子校と比べると私立の合格者の割合が多い。国立受験のノウハウが確立されていないのでは」(上医師)
さらに、女性の合格率が男性を上回った国公立24校のうち、21校は中部地方から西の大学だった。上医師はこう考える。
「首都圏の男子校の生徒は東北に進むが、西日本には行かない。一方、西日本は男子校が少なく、共学の進学校が多いのです」
女性の合格率が改善されたとはいえ、合格者数そのものは依然として男性のほうが多い。21年度入試では81大学の総合格者は男性が8421人で、女性(5880人)の約1.4倍だった。女性志望者が少ないと言える。女性医師は医師全体で見ると約5人中1人しかおらず、割合は経済協力開発機構(OECD)のなかで最も低い。(編集部・井上有紀子)
※AERA 2022年3月7日号より抜粋