(AERA 2022年1月24日号より)
(AERA 2022年1月24日号より)

 東大初の女性理事で、現在は一橋大学大学院経営管理研究科で特任教授を務める江川雅子さんはこう語る。

「海外でも男女の偏りはありました。女の子だから理数系は向いていないと言い聞かせられていると、女の子は『できない』と思い込んでしまいます。そうして『できない』と言い聞かせられると、本当にできなくなるという実験結果もあります」

■反対が根強い女子枠

 だが、世界は変わりつつある。

「海外の大学は同質的な環境は教育研究にマイナスだと気付いて、多様性を高める努力を重ねてきました。性別、人種などさまざまなバックグラウンドを持つ人がいるから、新しいアイデアが生まれる。同質性が高いとイノベーションは生まれない」

 欧米の大学と女子の割合を比較すると、東大が世界の流れから取り残されていることがわかる。海外ではアファーマティブアクション(差別是正措置)を採用する大学が少なくない。ただ、週刊朝日が21年、東大合格者実名アンケートで「入試で女子枠を作ることに賛成か反対か」と質問したところ、理系では男女合わせて67%、女子に限ると77%が反対した。昨年3月の東大の記者会見でも、福田裕穂副学長(当時)は女子枠について「きっと認められない」と答えた。公平・公正の観点から反対する人は多い。江川さんは言う。

(AERA 2022年1月24日号より)
(AERA 2022年1月24日号より)

「応募する女子が増えないのは、卒業後活躍する自身のイメージを描けないという社会の問題でもあります。ここまで変わらないなら、社会での女性の活躍を時限的なアファーマティブアクションで後押しするのもいいと思います」

(編集部・井上有紀子)

AERA 2022年1月24日号より抜粋