東京大学生産技術研究所の次世代育成オフィスは、中高生対象にワークショップを開いている。科学と社会のかかわりを伝えている(photo 東京大学生産技術研究所提供)
東京大学生産技術研究所の次世代育成オフィスは、中高生対象にワークショップを開いている。科学と社会のかかわりを伝えている(photo 東京大学生産技術研究所提供)

 女子中高生向けのプログラミング教育を手がける一般社団法人Waffle(ワッフル)の田中沙弥果さん(30)もこう考える。

「小学生はただ楽しんで、男女差はないように感じます。でも、中学に上がると思春期で異性の目を意識し、男子が中心になって実験をするなど性的役割が出てきてしまうのではないでしょうか。大人になってもリケジョという呼び方をされて、女子としてレッテルを貼られているように感じてしまう」

■男子に敬語で話される

 大阪府出身の東大理科I類1年の女子学生(19)は、実際に周囲の目に悩まされてきた。

「高校時代、理系で女子が少なかったから、男子に敬語で話されて特別扱いされてきた感じがあります。本音で接してもらえなかった。また、中高の先生は『女子は文系、男子は理系』を前提に話していました。当たり前のように押し付けられて、むかつきました」

 帰省すると、近所の人から「女の子なのに東大の理系なんてすごいねえ」と言われた。

「そう言われると、理系だと言いづらくなる。東大、それも理系の女子だと、珍しいからか変人扱いされてしまいます」

 東大工学部出身で、現在は中部大学工学部教授の筑本知子さん(56)はこう話す。

「大学外で出会うママ友と仲良くなるのが難しい。何かの拍子に『出身大学はどこですか』と聞かれて、『東大』というと、『すごい』と言ってちょっと引かれます。さらに聞かれて、『理系です』と答えると、ママ友が『頭がいいんですね』と、この人は違うんだと、途端に見えない壁を作られるような気がします」

 東大OGの中には、東大卒、理系出身を隠す人もいるという。

 筑本さんは東大卒の女性を対象とした同窓会「さつき会」の役員でもある。

「女子高生から『東大に進んで無事に結婚できるか』と質問されることがあります。でも、さつき会が行った11年の調査では、東大卒の女性の結婚年齢はどの世代でも平均27歳代。第1次結婚ラッシュは、大学の同級生との結婚が多くて世間よりむしろ早いくらいです。こうした偏見を解消していきたい」

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