(AERA 2022年1月24日号より)
(AERA 2022年1月24日号より)

 出張授業では、女子生徒から「研究室に寝泊まりしますか?」と聞かれることもある。

「今は女性専用の休憩室ができましたし、ITのおかげでリモートで実験ができるようになりました。研究活動が研究室に日夜通うような環境ではなくなったんです」

 研究環境や体力面で女性に不利な状況が改善されつつあることも話すようにしている。

 このほか、生徒のためワークショップも開く。過去には日本航空(JAL)と連携し、整備工場や飛行機を見学。参加者に未来の飛行機の形や飛ぶ仕組みを考えてもらった。

 最先端の研究をする女性研究者が登壇する女子中高生限定の講演会も開催する。「応用数学って日常生活に関係あると思いますか」「液体の不思議を物理学で理解する」などをテーマにしている。

 こうした活動を通じて、工学は男性にも女性にも身近なものだと伝えるように努める。

「科学技術が社会にとってどのような意味を持つか考えてもらい、工学と社会のつながりを身近に感じてもらいたいと思っています」

■学校推薦型選抜の拡大

 大学も対策を立てている。自宅から90分以上かかる女子学生を対象に、最長2年間、月3万円の家賃を補助する制度を17年度から設けた。母校を訪問して東大に入ってよかったことを紹介した女子学生には、交通費の一部を支給する。女子高生のための大学説明会も開く。

 また、女子合格者の割合が一般選抜より多い学校推薦型選抜(旧推薦入試)の枠を21年度から広げた。国も女性の理系研究者を増やそうと、大学が女性研究者の新規採用の割合などの目標値を掲げるよう21年3月に閣議決定した。

 大島さんは東大大学院原子力専攻の学生だった頃を振り返る。

「女子が少ないため、女子専用の設備が整っていませんでした。30年前、よく使う棟にあった女子トイレは男子トイレの一角にありました。今はトイレも随分増えましたし、きれいになりました」

 少しずつではあるが、女子学生が学びやすい環境になりつつあると感じている。(編集部 井上有紀子)

AERA 2022年1月24日号