(AERA 2022年1月24日号より)
(AERA 2022年1月24日号より)

 理系の女子学生を増やそうと試行錯誤を続ける東京大学。「出張授業」や「受入授業」など、理系女子を応援する活動を展開している。AERA 2022年1月24日号の記事を紹介。

【グラフ】どう変わった?東大卒業生の女子の割合はこちら

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 東京大学理科I類に昨春入学した女子学生は驚いた。

「私のクラスは33人中、女子は8人だけ。理系では女子がクラスで一人きりにならないように女子を集めたそうで、クラスに女子がいて安心しました。でも、男子だけのクラスもあります」

(AERA 2022年1月24日号より)
(AERA 2022年1月24日号より)

 東大は女子学生の割合が際立って少ないことで知られる。特に理工系の学部が顕著で、内閣府の調べでは9.4%。国公私立大学の平均17.7%を8.3ポイントも下回る。工学部の物理工学科にいたっては男子116人に対し、女子は2人(1.7%)しかいない。

(AERA 2022年1月24日号より)
(AERA 2022年1月24日号より)

 東大は2020年までに女子学生比率を30%にする目標を掲げていた。だが、学部では2割の壁も越えられない。しかも理工系の学部では1割前後だ。

「そもそも東大を目指す女子が少ない」

 東大女子が発行するフリーペーパー「biscUiT(ビスケット)」を作る東大理科II類2年の曽宮一恵さん(20)はそう語る。21年度の一般選抜で、女子の志願者は文理合わせて20.4%だった。

(AERA 2022年1月24日号より)
(AERA 2022年1月24日号より)

■油にまみれない研究も

 現状を打破しようと、工学系を中心とした東大大学院生が所属する「東大生産技術研究所」では、理系女子応援プロジェクトを展開する。同研究所の大島まり教授(数値流体力学)が11年、若い人に科学技術の意義や役割を伝えるために次世代育成オフィスを立ち上げ、全国の中高生男女に年20回ほど、「出張授業」や東大に来てもらう「受入授業」をしている。

 例えば、機械工学というと機械の油にまみれるイメージを持ち、敬遠する女子生徒がいるという。大島教授は、そうでない研究もあると伝えている。

「私が研究するバイオメカニクスは、血流のシミュレーションやそれに関わる実験をします。血流が血管壁に与える力学的な影響を研究することで、動脈硬化など血管病変のメカニズムの解明を目指しています。医師なら、人の命を助けていると想像しやすいでしょう。でも、機械工学がどう役に立っているかなかなか見えてこないので、社会との関わりがあることを伝えています」

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